マッチレポート
4月17日に始まったトップリーグプレーオフトーナメント。準決勝からは第58回日本選手権を兼ねる。2020年5月に開催予定だった同選手権は新型コロナ感染拡大の影響で中止されたため、2年ぶりの開催になった。
「梅雨入り間近」を思わせ、少し蒸し暑さが覆うこの日の花園、ともに2回戦からの出場のトヨタ自動車ヴェルブリッツとパナソニックワイルドナイツの名門チーム同士の対戦となった。
トヨタは8日のNTTドコモレッドハリケーンズ戦で後半に8点差から逆転(33-29)。パナソニックはキヤノンイーグルスに粘りにあったものの手堅く勝利を収めた(32-17)。パナソニックはリーグ戦で失点がホワイトカンファレンス最小の76と堅いディフェンスを誇る。この防御陣にレッドカンファレンス2番目の288得点をあげたトヨタがどのように対応するか。注目の対戦は、緊急事態宣言に伴う大阪府の要請で無観客となり、静かで緊張感が漂う中で開かれた。
試合はトヨタの元南アフリカA代表SO⑩ライオネル・クロニエのキックオフで始まった。
この緊張感を切り裂くようにいきなりスコアが動く。1分、パナソニックはキックオフをキャッチした自陣深くからWTB⑪福岡堅樹が22mライン付近で相手を振り切り、フォローしたFB⑮野口竜司にいったんパス。リターンパスを受けて一気にG左隅に押さえた。
ノーホイッスルトライ。しかしトヨタもすぐに反撃。5分、CTB⑬ロブ・トンプソンがディフェンスの隙をついて突進し、最後はFL⑦古川聖人がトライを奪った。
更に9分、16分にWTB⑭高橋汰地がトライし、15-5。ただこの3つのコンバージョンをSO⑩クロニエが外したのは痛かった。
リードを奪われたパナソニックは逆に21分と27分に得たPGをSO⑩松田力也が確実に決め、更に24分には公式戦初というドロップゴールも決めた。15-17。トヨタは35分にSO⑩クロニエが今度はPGを成功させ、前半は18-17で終えた。
後半は、トヨタのタックルが甘く、徐々に動きが鈍くなり、後半から吹き始めた風上も味方にできなかった。対するパナソニックは20分、相手G前5m右ラインアウトから左へ展開し、17分からWTB⑭梶伊織に替わった㉒山沢拓也が相手タックルが甘くなったところを突いてトライ。SO⑩松田のGが右ポールに当たるものの内側に跳ねて加点する。27-21。
29分にもWTB⑭福岡が2本目のトライを決め32-21、勝負あり。ミスはあったものの、WTB⑭福岡の3トライやSO⑩松田の21得点とチャンスを確実にものにしたパナソニックの試合運びが光り、3大会ぶりの決勝進出を果たした。
記者会見レポート
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
サイモン・クロンヘッドコーチ
ショートサイドの人数が少なくなり簡単なスコアを許してしまうシーンもありうまくいかないところもあったが、アタックのシステムがうまく展開してプレッシャーをかけ、自陣から攻めていいトライにつながったシーンもあった。前半に関してはいいコントロールができていたと思う。しかし後半はオフサイドなど簡単なペナルティーから自陣に攻められるシーンが続き追いかける展開になった。ディフェンスのラインから前に上がっていないところのスペースをパナソニックに簡単に突かれた。
茂野海人共同キャプテン
前半はだいたいうまくいっていたと思うが、簡単なトライを取られたところから、しっかり自分たちにフォーカスを置いて実行した。セカンドハーフはマークのミスであったり、規律がうまくいかず簡単なペナルティーを与えて、自分たちのミスから相手のスコアにつながったと思う。
古川聖人選手
今シーズンは「ベストオンザベスト」がチームの目標で、どの試合も自分たちの最高を出し、結果ではなくプロセスを一つずつ遂行することでその過程が結果につながると信じてやってきた。自分たちがやりたいことをやり切れなかったところがあり、最終的に結果につながらなかった。
Q.悔やまれるシーンとなぜ起きたのか
茂野共同キャプテン
ここまでくるチームはどこもいいチームで一瞬の判断や一瞬のミスが命取りになることをチームに話していたが、スイッチが入っていない選手がいたり、役割が遂行できず難しい部分があった。全員最後までやり切ったところは評価できる。
Q.相手のエリアマネジメントの印象は
茂野共同キャプテン
パナソニックはうまくキッキングでゲームコントロールしてきたというイメージはある。自分たちもうまくいっている時間帯もあったが、個々の役割に集中してやり切るところは来年に向けて成長していきたいところである。
Q.パナソニックに勝つためには何が必要か
クロンヘッドコーチ
50分、55分までは我々のストラクチャーやシステムはうまくいっているように感じた。パナソニックのような相手と対戦する際にはチーム全員がそれぞれの役割をやり切る必要があり、1人2人でも役割ができていないとうまくいかない。パナソニックやサントリーとの対戦は84分間、戦い続けることが重要。スピードがありバックスリーを強みとするチームにはスペースを空けることが命取りになると思う。後半に関してはペナルティーを多く与えてしまったが、サイドジャッジがうまく見てほしいシーンもあった。キックゲームはうまくいかず、フィールドポゼッションをコントロールできなかったのは課題だと思っている。
Q.古川選手を7番で使った選択は
クロンヘッドコーチ
非常に素晴らしい仕事をしてくれたと思っている。7番のポジションにしてはサイズが小さいプレーヤーだが、オンゴールやラインスピードをけん引していく点、コンタクトエリアで負けない強さを持っており、今シーズンのベストゲームだったと思う。キャップ保持者や外国人選手でまわしていかなければならい点はあるが、古川は出られるチャンスを最大限に活用し110%を出しやり切ってくれる素晴らしいプレーヤーである。
Q.後半はパナソニックの圧力が疲労につながったか
クロンヘッドコーチ
前半はセットが早くできている点、ブレイクダウン周りの粘り強さ、ディフェンスのコネクト、コネクションの点でチーム全員がオールインとしてディフェンスができていたしプレーが遂行できていた。後半はスピードが落ちた。体力よりメンタル面が寄与するところが多いと思う。ラック周辺でのディフェンススピードが落ち、それぞれがコネクトできていないところからスペースを生み相手に抜かれてしまったシーンが多々あった。これは体力よりマインドセットに起因する点が多いと思う。
マイケル・フーパー選手
トヨタとしては非常にいいラグビーができた点は多かったと思う。プレッシャーをかけてパナソニックを止められたシーンも多かった。パナソニックはフィニッシュの点で非常によいチームだった。我々の小さなエラーから得点を重ねられた。
Q.前半はうまく戦えていたが後半はどう感じたか
キアラン・リード選手
前半はテリトリーをかなり取られてしまったシーンもあり、ゲームを通じて弱みを握られ、我々のアタックラインを下げられる点がよく見られた。得点板は実際のゲームの状況を反映していない点も多いが、本日の結果は得点板通りになった。パナソニックの質のいいラグビーが結果になった。
Q.パナソニックと違ってトヨタの交替選手がインパクトを与えられなかったが
フーパー選手
他のプレーヤーと比較してインパクトがなかったとはまったく思わない。ベンチから途中出場したプレーヤー全員が試合に付加価値を与えたと思う。テリトリーを上げて前に攻め込むのは、パナソニックのプレッシャーがかなりあり進めなかった。プランはあったが実行につなげられなかったことが挙げられる。この試合に関しては素晴らしい準備をしてきたが、この点に関してはまだ課題が残っている点であると思う。
Q.同じ7番の古川選手について
フーパー選手
個人的に非常に楽しんで取り組めた。学ぶことにハングリーな精神をいつもみせるプレーヤーで、練習で毎日毎日質問に来る。普段と違う心構えや違う準備をして取り組むなど、古川との関係性を自分としても楽しんでいた。若く素晴らしいプレーヤーでリーダーシップでもトヨタの中で非常に存在感がある。成長してほしい。
Q.来シーズンのプランは
フーパー選手
国代表の試合があるのでオーストラリアに戻る。フランスがオーストラリアに来て2試合する。自分の集中点はそこになる。あとについては現時点では考えていない。日本での時間はすごく楽しんだし、いい時間を過ごせた。チャンスがあれば戻ってきたいが現時点ではまだ考えていない。
リード選手
ラグビープレーヤーとしての時間はこれで終わりと考えている。ニュージーランドに戻って家族との時間を過ごすことを楽しみにしている。このシーズン、家族と会えないことを非常につらく思っていた。プレーヤーとしては終わりなので今後はどうするか考えていく。日本でのラグビーは非常に楽しくエンジョイできた点が多かった。今後数年、日本のラグビーが伸びる点が多くあると思い楽しみにしている。
Q.ファンにメッセージを
リード選手
日本中のファン、サポーターの皆様に心からお礼を申し上げる。残念ながら昨今の状況においてスタジアムを満席にすることはかなわなかったが、今後満席になることはあると思う。皆様のサポートがあったこと、各会場で皆様を笑顔にできたことが多くあったと思う。皆様のサポートに感謝する。
Q.日本のラグビーの伸びる点は
リード選手
非常にいいスタイルのラグビーがプレーされている。アタック重視のラグビーは代表チームにも表れている。外国人プレーヤーが来日して日本のプレーヤーに影響を及ぼしている。学ぶことに熱心で状況にも適応する力もあるので、外国人プレーヤーが入ってプレーすることで付加価値を与えることができればいいと思う。いいスタイルでプレーしているので、今後も高いレベルでのプレーを楽しみにしている。プロとして来ている自分やフーパーと違う状況の中で、トヨタの大多数のプレーヤーが会社員として働きながらプレーしているのは称賛に値する。
Q.現役としてのキャリアは続けていくのか
リード選手
ラグビーのプロプレーヤーとしては今日の試合が最後となる。
Q.高校の先輩の布巻選手とどんな言葉を交わしたか
古川選手
プレーを見てもらっており、追いつき追い越す気持ちでやっている。
Q.自身の改良点は
古川選手
フーパーとは、タックルやジャッカルなど一緒に練習してきて、ジャッカルではいろいろなシチュエーションで体の使い方やボールを取る意識など一つ一つ丁寧に教えてもらった。まだ納得できる結果になっていないが、方法が見えてきたので結果につなげていくことでフーパーを超える選手になりたい。
Q.フーパー選手との時間は
古川選手
フーパー選手は小さいころから憧れで目標の選手だった。同じチームでプレーできたことは夢のような時間だった。また1週間一緒に練習したいという気持ちだった。人間としても尊敬できる人で、プレーヤーとしても準備や過程をしっかり踏むことで結果が生まれるようにするプレーヤーだ。
Q.自分自身の足りなかったところは
古川選手
チームにインパクトを与えるプレーをしたかった。アタックでもディフェンスでも、タックルでももっと相手をドミネイトするようなタックル、相手に絡んでボールを取ってチャンスをつくりたかった。結果として負けているので満足しているものは一つもなく、よりいいプレーヤーになるためには満足できるものはない。サイズの変わらないフーパーと一緒に過ごす中で妥協はせず、教わったことを一生懸命やり続けたい。
高橋汰地選手
ファーストパンチを与えようと前半の入りから臨んだが、簡単なトライを与えてしまって流れが悪くなったと思ったが、全員で自分の役割を明確にしていいコミュニケーションをとりながら3トライを取れたのはいい前半だった。後半は途中でPGで点を取られるなど我慢できる時間はあったが、最後に連続トライを与えてしまった。個人のミスやフェーズを刻めなかったりして結果としてスコアは離れてしまった。この悔しさを次のシーズンにつなげてチーム全体でも個人でももう一段階もう二段階レベルアップして次のリーグで優勝を目指してチーム一丸となって頑張っていきたい。
Q.世代交代をどう感じるか
高橋選手
トヨタの中で我々と一つ上が16人いるが、この年代がチームを引っ張っていくことでチームとしていい方向に向かっていけると思っている。福岡選手とマッチアップできたのは今後のラグビー人生でのいい経験だと思う。昨年はぜんぜん歯が立たなかったが、今回は3本のトライ与えてはしまったが、自分の強みのスピードとフィジカルを見せることができたと思う。ネガティブに考えずこれからの自分のスキルアップにつなげたい。
Q.日本代表候補入りしていないことをどう受け止めているか
高橋選手
メンバー選考の基準が対外国人を想定しているように感じている。サンウルブズでも国際大会の日本人選手でもそう感じる。自分としては体重を増やしてフィジカルを強くして、自分のプレースタイルを貫いて「選ばざるを得ない」ぐらいの活躍を見せていくことが一番いいと思う。ワールドカップメンバーが決まるわけではなく、まだ焦る必要はない。一つ一つの試合で自分のベストのパフォーマンスを意識したい。
Q.ブレイクダウンで前半はトヨタが相手の反則の場面があり後半はトヨタが押す場面があったが
古川選手
後半はメンバー交替があり、前半メンバーの足が止まり、リザーブで入ったメンバーの勢いなどが違った印象がある。自分たちとしてはハードワークできたところもあり甘さが出たのかもしれない。
Q.どういう部分で引っ張っていきたいか
高橋選手
強い相手と試合して、得るところや自分の課題が毎試合見つかっており、チームと合流する若い世代に経験したことを還元できたらいいと思う。試合中にもトヨタとしての勢いを出すために、自分ももっと一瞬の判断やプレーの精度を更にアップすることが必要だ。
Q.後半差が開いた一番の原因は
高橋選手
ブレイクダウンの精度や寄りが遅くなり、足が止まっている選手もいたのかと思う。ビッグゲームで陣地を取るのが相手の方が上手だった。ウイングだったらチームをオンサイドしてディフェンスにプレッシャーをかけるなどが足らなかったと思う。
Q.リード選手と過ごした時間は
古川選手
小さいころからの憧れの選手で、リーダーシップのとり方などたくさん学ばせてもらった。リーダーシップとは何か、どういうふうに伝えるべきか、口調や話すタイミングなどがうまく、言葉の壁はあったが日本人でもすーと入ってくる伝え方をしてくれた。それを含め人としてプレーヤーとして尊敬している。今シーズンはシーズン前からラグビーを通していい仲間になれた。優勝で終わらせてあげる思いが強く、結果としてそれができず本当に悔しい。
パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
まさにプレーオフの試合になった。トヨタは分析の予想通り、アタック・ディフェンスとも効果的なプレッシャーをかけてきた。特に前半、苦しい中でも落ち着いたプレーをチーム全体がしたので、他のメンバーにもいいインパクトを与えてくれた。プレーオフの試合は大きなメンタルのプレッシャーがかかる。メンタルにプレッシャーがかかった場面で集中を失う場面もあるが、ゲームキャプテンの布巻選手がチームの落ち着きを上手にマネジメントしながら戦ってくれた。
布巻峻介ゲームキャプテン
プレーオフらしい試合になった。前半から相手はタフにアタックしてくるのはわかっていて臨んだが、それでもプレッシャーを受けてしまって苦しい時間帯も続いたと思う。気持ちだけは切れることなく、いつかチャンスが来ることだけを信じてもう一度自分の仕事に集中しようと話した。後半入ったメンバーも勢いを与えてくれ、最後は点差は開いたが前半しっかり我慢して後半相手にプレッシャーを与えるゲームプランは遂行できた。
Q.堀江選手の投入が早かったが狙いは。成果はあったか
ディーンズ監督
常にチームにプラスの付加価値を与える選手。おそらく早い時間の投入は本人も思っていなかったと思うが、長い出場時間に上手に適応してくれた。島根選手は今日まで坂手選手に替わって非常にパフォーマンスを発揮し続けてくれたと思う。
Q.いつものパナソニック以上に反則が多く22m以上の突破など悪いスコアだった原因は
布巻ゲームキャプテン
簡単なミスで相手にボールを渡してしまって、自陣から脱出できなかったところと、敵陣に入っても簡単なペナルティーで侵入を許してしまったところを起点にプレッシャーを受けたのかと思う。キックの蹴り合いになったらプレッシャーをかけることは言ってきたので、それが1試合通じてできたので、エリアの取り合いでもいい形で終えられたと思う。
Q.ハーフタイムで修正点は話したか
布巻ゲームキャプテン
自分の仕事をやりきることと、仕事と仕事の間の動きが遅かったので待っている部分を早くしろと言った。
Q.後半で突き放せると自信はあったか
布巻ゲームキャプテン
そんな自信はなかった。ポイントできるときはポイントする組み立てでやっている。後半はチャンスをくることは願っていたが今日の試合の展開を読んで3点を狙っているわけではない。
Q.福井選手の評価は
ディーンズ監督
彼はいつもベンチから出てきたときにチームにいい働き、貢献をしてくれる。特に相手が疲れてきたとき福井選手の正確性や精度、フットワークが相手チームにプレッシャーをかけられていると思う。今日もいい活躍で、チームのレベルをもう一段階上げてくれた。
Q.無観客での感想は
布巻ゲームキャプテン
少し違和感はあった。お客さんに見てほしかったが、プラスに捉えて、声がしっかり通るのでしっかりしゃべっていこうと話した。
Q.サントリー、クボタの印象は
ディーンズ監督
どちらのチームも決勝に進出する力があると思う。前回、両チームが対戦したときは拮抗した。あすもいい試合になると思う。明日クボタはサントリーに非常に試練を与えると思う。クボタは神戸製鋼との試合で約60分間を14人で戦い切ったのは素晴らしく、すごいことだと思う。どちらが勝ってくるか予想はつかず、両チームに同じぐらいチャンスがあると思う。
Q.エリア取りでキックやチェックラインでの意識は事前の計画と実際は
布巻ゲームキャプテン
どういうキックを蹴るかは決まっていなかったが、蹴ったときのキックチェイスはみんな意識した。誰かが行ったときは後ろの選手がカバーをしっかりするし、ワンラインの時はしっかり横につながるというコミュニケーションをしっかり取るのは練習でも意識した。
Q.反則に対するブレイクダウンでの変化は
布巻ゲームキャプテン
前半少しキャリアが早く寝すぎて相手のジャッカルやチャンスを与えてしまったと思う。後半はキャリアサポートを待ってブレイクダウンすると、いい形でボールが出たのでそこの変化はあった。
Q.反則に対するブレイクダウンでの変化は
布巻ゲームキャプテン
前半少しキャリアが早く寝すぎて相手のジャッカルやチャンスを与えてしまったと思う。後半はキャリアサポートを待ってブレイクダウンすると、いい形でボールが出たのでそこの変化はあった。
Q.堀江選手が入ってきてチームの雰囲気や試合の感じは変わるのか
布巻ゲームキャプテン
堀江選手が言うとみんなの気が引き締まるし、早い時間帯にカツを入れてもらって、みんなスイッチが入ったと思う。
Q.早く点を取った影響は
布巻ゲームキャプテン
いい形で入ったが「少しラッキー」ぐらいでゼロゼロと思ってやり直そうとみんなに言ったが、相手はそれでふっ切れたのかもしれない。
Q.前半パナソニックにしては反則が多いなどうまくいかなかった状況は
松田力也選手
前半スタートのノーホイッスルトライでいいゲームの入りができたが、きれいに取れ過ぎたことからチーム全体が「ほわっ」とした雰囲気になったのではないかと感じる。もっと接点やディフェンスラインでアグレッシブにいければ流れが変わったかもしれない。相手の強みのフィジカルや、いいランナーに走られて相手に流れを渡してしまった。
Q.入ってすぐにトライが取れたが
山沢拓也選手
トライは結果として取れただけで、相手の足が止まったところを途中から入った人たちが突こうと狙っていたので、チームとしてできた。
Q.前半の苦戦はどう見ていたか
山沢選手
トヨタは前半強いと分析があったので、どれだけ耐え、負けないかというところだった。最初3トライを取られたが、そのあとPGなどで点差は開いていなかったので結果としてうまく試合を運べたと思う。
Q.前半の終わりから着実にフェーズを重ねるプレーの選択は意図があったのか
松田選手
ゲインラインを取ることをチーム全体で意識していた。前半でしっかりコンタクトして相手にプレッシャーをかけていった。敵陣でプレーしていく時間が増えてきていたので、そこでプレッシャーをかけるという判断でチームに伝えた。相手が前半からプレッシャーをかけてきて早い段階からスコアされるのは分析通り。そこにはまってその流れにはしたくなかったのでもう一度チーム全体で自分たちの仕事をどうするかのコミュニケ―ションを取ったが、時間を重ねる中で自分たちの流れを引っ張ることができた。初めからできればよかったがトヨタの力強いアタックに受けてしまったのは次への反省。
Q.ドロップゴールの狙いや意図は
松田選手
点差的には離されたくなかった時間帯だったので、トライを取れればベストだったが3点でも追いつこうとイメージしてプレーしていた。ドロップゴールをゲームで決めたのは初めてだったが、チャンスがあれば狙っていた。
Q.ドロップゴールで相手の動きに変化はあったか
松田選手
直接は感じなかったが、少しでも相手に「もしかしたらドロップゴールがある」と考えてもらい、こちらのオプションの幅が増えいいプレッシャーになればいいなあと思う。
Q.エリアマネジメントについて
松田選手
トヨタには左右のいい2人のロングキッカーがいるので、シンプルに蹴り合ってしまうと相手のペースにはまってしまう。蹴り返すところは蹴り返すし、ハイボールで競るところは競る、どのエリアでどのプレーを選択するかは野口選手と練習で話していたのでプレーの中で再確認し、いいプレーを選択してくれた。相手のチェイスラインの多い少ないもあるし、ハードチェイスしてこないとオプションができるし、あとは前を見ての個人の判断。
山沢選手
前半はできたと思う。ロングキックや相手にプレッシャーを与えるコンテストボールなど、バリエーションも多く相手にもプレッシャーがかかっていた。相手にいいキッカーが2人いる中での選択はチームとして統一できていた。
Q.山沢選手が入ったときにルルー選手が交替したが
山沢選手
左足もあるルルー選手なので蹴り合いの部分で勝ち切るのが難しい中、右足のキッカーだけになったので比較的やりやすくなった。
Q.3トライの福岡選手について
松田選手
相手は絶対にマークしないといけないので、福岡選手をうまくおとりに使ったり、いいボールを集めたりしてオプションを判断できる。味方でよかった。まだまだラグビーをやってほしい。最後の試合がトップリーグ決勝という最高の舞台でできることに感謝していると思うし、チーム自身も優勝させて次のステージに送り出したいと全員が思っている。最後は笑えるようにあと1週間準備できることに感謝してプレーしたい。
Q.逆転勝ちのパナソニックの強さは
堀江翔太選手
前半、動きがよくなく掛け違いがあり、大したことで点差を開かれている印象はなく、いつも通りのことをやれば点差は縮まるだろうと思いながらやっていた。大きくこれを変えたということはやっていない。自分たちがやれることをやっていこうということで、ちょっとずつ点差を縮めていったという感じだ。ベンチメンバーは話しながらゲームを見ている。前半のプレーを見ているだけに後半メンバーの方が動きやすいと思う。
Q.最後の花園だが
福岡堅樹選手
このスタジアムにはたくさん素晴らしい試合をさせてもらい、思い出もあり、最後はハットトリック(3トライ)で終われたのはよかった。トータルのパフォーマンスは足りないところがたくさんあったので決勝に向けて修正していかなければならない。いい結果が出やすいスタジアムだ。
Q.早い段階での出場だったが
堀江選手
前半からいつからでも用意している。動きの悪い選手に話しながら前半はやっていた。
Q.試合始まってすぐのトライだったが
福岡選手
ここまで早いトライはなかったが、分析の中であの場面は狙っていこうというところではあった。得点につながったのはよかったが、チームが浮ついてしまい自分らしさを見失ってしまった部分があったので、そのあともエリアマネジメントなどをより修正していかないといけないと思った。
Q.対面にトライを取られたのは発奮材料になったか
福岡選手
(最初の)トライの後、浮ついていた反省はある。セットプレーからのトライはコミュニケーションミスなのでチームで統一すれば修正できる。1本は自分自身のタックルミスであり、決勝に向けて準備していかないといけない。
Q.練習と授業の両立は
福岡選手
チームとして練習で押さえないといけないところはそちらを優先させてもらって、出席できない部分は特別扱いしてもらうことはできないので自分でカバーしている。できる限り授業に参加し、練習して両立を図っている。
Q.ラインアウトの修正は
堀江選手
ジャンパーがサイン通りやっただけ。
Q.前半ジャッカルに入られることが多く、修正したか
堀江選手
キャリアに立っておいてくれと言った。抜けた後に倒れることが多く、立ってプレーすることとサポーターに早く寄るように話した。
Q.接戦になりラグビー人生が終わることを脳裏によぎったか
福岡選手
まったくなかった。チームの後半の強さを信じており、相手が完全に足が止まってきているのはわかっていたので、自分たちが修正するところを修正すれば負けることがないと信じていた。
Q.最後の試合はどんなプレーをしたいか
福岡選手
自分の中でできる最大の試合数を最後にすることができ、決勝に残ることができた。思い残すことがないように、全力で100%で臨むのは決勝でも変わらない。
Q.堀江選手が出した指示通りに選手が動くのはなぜか
堀江選手
どこかに「勝てる」という思いがあったのかもしれない。余裕を持つことと安心することは違う。余裕を持つのはよいが必死にならないとどの相手にも勝てない。余裕を持ちすぎて安心している感じだったので自分から必死さを出しながら話していた。
福岡選手
姿で見せるのもあるが、歯に衣着せずダイレクトに言うのでそれが刺さって自覚するのでは。
Q.高橋選手の能力をどう感じるか
福岡選手
いいものを持っている。自分自身も1本きれいに抜かれたし、体の強さや空中戦で競れるのは日本人の中では能力の高い方だと思うので、今後試合を経験してより高いレベルを目指して日本代表のウイングで活躍してほしい。バランスが高いので、世界で通用する何か一つ武器を探し当てて、よりどころにして戦える部分を見つけてほしい。
(文責:大阪府協会 丸井康充)
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