1月21日(土) 日本選手権準決勝 パナソニック 36-24 ヤマハ発動機

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第54回日本選手権準決勝
パナソニック VS. ヤマハ発動機

2017年1月21日(土) 12:05キックオフ グラウンド:東大阪市花園ラグビー場
パナソニック ヤマハ発動機
36 FULL TIME 24
前半 7
3 後半 17
詳細
(日本協会公式)

マッチレポート

先週のトップリーグ閉幕から1週間、休む間もなく開幕した日本選手権準決勝。トップリーグ上位3チームと大学選手権王者による方式の最後の大会。東大阪市花園ラグビー場で行われた第1試合はトップリーグ2位のヤマハ発動機ジュビロと3位のパナソニックワイルドナイツとの戦い。レギュラーシーズンではこの両チームは8月26日の開幕戦で対決し、強力FWの活躍で終始リードを守ったヤマハ発動機がパナソニックの猛追をかわして24-21で逃げ切っている。パナソニックはFW戦で完敗したこの敗戦での勝点差を埋めることができず、トップリーグ4連覇を逃している。改装前の聖地花園ラグビー場でのシーズン最後の頂上決戦を目に焼き付けようと早朝から訪れた7,000人を超すサポータの前、風上に立ったパナソニックSO10番山沢拓也のキックオフでゲームが開始された。

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序盤からFW戦は激しい応酬で両チームの意地のぶつかり合い。レギュラーシーズンの対戦ではヤマハ発動機に圧倒されたスクラムもパナソニックが奮起して互角の戦い。力と力のぶつかり合いの様相となった。いきなり前半10分、パナソニックはゴール前20m左中間スクラムからSH9番田中史朗がサイドを突いたWTB11番福岡堅樹に手渡し、抜け出した福岡がそのまま中央にトライ。SO10番山沢のゴールも決まり7-0とあっさりと先制した。

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さらに直後の12分、22ml左中間ラックより今度はSO10番山沢がショートサイドにキック、自らボールを拾いヤマハ発動機ゴールに迫る。最後はフォローしたCTB12番林泰基が左隅に押さえ12-0と点差を拡げる。24分にはHL中央付近からパナソニックがSO10番山沢のショートパントで前進。背走するヤマハ発動機DF陣を翻弄するかのようにゴール前15m中央付近からSH9番田中が左に展開、今度はWTB14番山田章仁が中央にトライ。パナソニックが高速バックスによる3連続トライで19-0と大きくリードした。

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一方のヤマハ発動機も直後の28分、ゴール前5mの左ラインアウトからモールを形成、重量フォワードが押し込み、最後はSH9番矢富勇毅が押さえ19-7と追撃を開始する。しかしながら勢いに乗るパナソニックも反撃。前半終了間際は積極的に自陣から仕掛ける。密集での№8・8番デービッド・ボーコックらのターンオーバーなどでヤマハ発動機ボールを奪うとあとは高速バックス陣が縦横無尽にボールを繋ぎ、35分にWTB11番福岡、38分にはCTB13番リチャード・バックマンが立て続けにトライを重ね、33-7とパナソニックが5トライでヤマハ発動機を大きくリードして前半を終えた。

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後半に入ってもパナソニックの強固なDF網はヤマハ発動機にペースを掴ませない。またヤマハ発動機は得意のスクラムでも優位に立てず、時折見せるモールも押し切れない。しかし10分には22ml中央付近のラックからSH9番矢富が左に展開、WTB11番田中渉太が左中間に押さえ33-12。その後もヤマハ発動機はパナソニックを1PGに抑え、30分過ぎから左LO4番大戸裕矢、WTB14番伊東力が続けてトライを挙げるが、前半の失点が響いてパナソニックの優位は揺るがない。レギュラーシーズンの雪辱を期して頂点を目指す両チームの戦いは、戦前の予想を大きく覆し、36-24の得点差以上のパナソニックのペースで幕を引いた。

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ゲームの行方は大方、前半で決してしまった。ヤマハ発動機は得意のフォワードプレイが封じられ、セットプレイでもミスを連発するなどリズムを掴めないまま失点を重ねた。一方のパナソニックは前半、風上を利してエリアを支配し、さらにヤマハ発動機得意の接点付近での攻防を避け、高速バックス陣が外のエリアで勝負してトライを重ねた。またディフェンス網も完璧で、前半だけで6つのターンオーバー(ヤマハ発動機は1)を挙げたことも大きな勝因である。しかしながらヤマハ発動機の圧倒的なフォワードプレイはリーグ戦を通して他者をよせつけず、来シーズンはさらに強みに磨きをかけて頂きを目指してほしい。パナソニックはリーグ戦3位の雪辱を果たし、日本選手権連覇というもう一つの頂点をかけて29日の決勝戦に臨む。

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改装前、最後の聖地花園での好ゲームに魅了された観客は、両チームのハイレベルなゲームに魅了され、最後まで惜しみない拍手を送っていた。またノーサイド後、この試合でレフリーを引退する松岡辰也氏を送るセレモニーが行われ、好ゲームに花を添えた。

記者会見ダイジェスト

ヤマハ発動機ジュビロ 
清宮克幸 監督

シーズンの最後に不甲斐ない試合をしてしまった。今シーズンは、シーズンを通して強みを増しながら戦えたのだが、今日の試合は、前半のトライの与え方など今後に向けての反省点が多い。前半20分ぐらいまでに重ねてトライを奪われたが、パナソニックの外のスピードランナーに対する準備が不足していたように思う。ターンオーバーからカウンター攻撃を受けてミスマッチを衝かれてしまった。

三村雄飛丸 キャプテン
リーグ戦は自信を持ってここまで来られたのだが、今日の試合では、まだ足りないものを見せられた、これから来シーズンに向けてそれに対応して行きたい。

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――トスで風下を選択したのではなかったか?
清宮監督

前半トスで風下を選択したが、10点以内のビハインドであれば取り返せるし、精神的に追い込まれることもないだろうと思っていた。しかし、如何せん前半に取られすぎた。パナソニックに簡単に裏に出られた、そこに弱さがあったのだと思う。

――パナソニックのスクラムは?
三田キャプテン

想定外の強さではなかったが、要所要所で食下がられた。やはり、スクラムで前に出られないと、リズムが出てこない。


パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

ハードな試合になるだろうと予測していたが、日本選手権準決勝に相応しいいいゲームができたと思う。ヤマハは基礎的な力のしっかりした、自分たちの強みを活かしてくるチームだ。スクラムやフィジカルで体をぶつけるゲームをしてくるだろうと考えていたのだが、パナソニックは、ディシプリンを守ってしっかりとボールを回す自分たちのラグビーを信じて闘った。
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布巻峻介 ゲームキャプテン
FWが特にスクラムで頑張って、ヤマハの強みを崩すことができた。ディフェンスからのトライが多くパナソニックらしいいいラグビーが出来たと思う。

――第3列をはじめとする選手たちの出来はどうか?
ディーンズ監督

選手たちはモーティベーションを徐々に高めて最終段階に臨んでいる。特に新人が13人もいる中での選手たちの成長にはコーチとして満足している。第3列に関しては、ターンオーバーを逃したような場面も見受けられたが良かったと思う。福岡のようなスピードランナーの力でトライが取れているように見えるかもしれないが、それ以前にチームとしてのプラットフォームを見てほしい。

――来週サントリーが相手になった場合どうか?
布巻キャプテン

サントリーにはシーズンで負けているので勝ちたいが、特別の思いはない。日本選手権決勝では相手のことよりも自分達のやりたいラグビーを目指したい。

――日本選手権に大学チームが出てくることについて?
ディーンズ監督

帝京大学は、日本の代表選手も居て年齢的にもトップリーグで戦えるいいチームだ。日本選手権に出てくることに違和感はない。

(記事:石川 悟、村島博、丸井康充)

フォトギャラリー

撮影者:KRPU 山口勝一


撮影者:KRPU 古田浩


撮影者:KRPU 渡辺隆夫