5月9日(日) クボタ 23-21 神戸製鋼

トップリーグ2021プレーオフトーナメント 準々決勝
2021年05月09日 12:45 K.O.
入場者数:5543人 天候:晴れ/弱風
レフリー:戸田京介(日本協会A)
アシスタントレフリー:久保修平(日本協会A) / 木村正彦(関西協会) / 松本安司
クボタ 神戸製鋼
23 FULL TIME 21
17 前半 7
6 後半 14
詳細
(日本協会公式)

マッチレポート

【前回王者の神戸製鋼に競り勝ったクボタが接戦を制し初の4強を決める】
レッドカンファレンス3位通過のクボタスピアーズと、ホワイトカンファレンス2位通過の神戸製鋼コベルコスティーラーズの準決勝進出をかけた一戦が晴天のエコパスタジアムで行われた。スタジアムには5,543人のラグビーファンが観戦に訪れ、クボタのキックオフでスタートした。

試合開始序盤から、クボタが猛攻を見せる。
前半3分、クボタがハーフウェイライン付近からボールを展開し、大きく前進。抜け出したCTB立川理道からラストパスを受けたNO8バツベイシオネが中央付近にトライ。SOバーナード・フォーリーのコンバージョンキックも成功し、7-0とクボタが先制する。
前半9分には、またもハーフウェイ付近の展開からクボタがパスをつなぎ、WTBタウモハパイホネティが抜け出してトライし点差を広げる。
その後も、SOフォーリーを起点とした多彩な攻撃と規律のとれた素早いディフェンスで、クボタが試合の主導権を握り、有利に試合を進める。

前半29分、神戸製鋼が敵陣5mライン付近のスクラムからNO8ナエアタルイのサイドアタックをクボタSOフォーリーが激しいタックルで止める。しかしTMOの結果危険なプレーと判断され、フォーリーがレッドカードで一発退場となる。
数的有利となった神戸製鋼はボールを支配し続け、前半39分にはSOヘイデン・パーカーが抜け出し中央にトライ。自らコンバージョンキックも成功させ17-7と後半に向け反撃の狼煙を上げる。

後半に入り、退場者を出して1人少ないクボタが序盤から優勢に試合を進めるも得点まで繋ぐことができず、一進一退の硬直した試合展開となるが21分、神戸製鋼の反則からペナルティを獲得したクボタが、ペナルティゴールを決め20-7と点差を広げ、硬直していた試合が動き出す。
23分、神戸製鋼がハーフウェイライン付近のスクラムからボールを展開し、最後はラストパスを受けたSH日和佐篤がトライ。後半途中から出場のSOアーロン・クルーデンのコンバージョンキックも成功し20-14と追い上げる。
さらに30分、激しいボールの奪い合いから、神戸製鋼がボールを奪取しバックスにボールを展開。ゴールエリアへのグラバーキックに反応したWTB山下楽平が相手選手ともつれながらも左隅のインゴールに飛び込みグラウディング。際どい判定となったが、TMOの結果トライが認められる。SOクルーデンの難しい角度のコンバージョンキックも決まり遂に神戸製鋼が20―21と逆転する。

残り10分この試合で初めてリードを許したクボタは、神戸製鋼の猛攻を粘り強いディフェンスでしのぎ、36分、敵陣22mライン付近で獲得したペナルティでショットを選択。WTBファンデンヒーファーがペナルティゴールを決め、23−21と再びリードする。

残り4分はクボタはボールをキープし続けノーサイド。
クボタは前半の終盤で退場者を出し数的不利な状況の中規律のとれたディフェンスで、終盤に逆転されるも前回王者の神戸製鋼との接戦を制し準決勝進出。トップリーグ初の4強を決めた。

(文責:静岡県ラグビーフットボール協会 齋藤 剛)

記者会見レポート

神戸製鋼コベルコスティーラーズ
デーブ・ディロン ヘッドコーチ(HC)
間違いなく、強い心で立ち向かっていった選手達のことは誇りに思っています。ただ、今日は、自分たちが精度を持って戦い抜くことができませんでした。クボタさんには「おめでとう」と言いたいと思います。

トム・フランクリン 共同キャプテン
クボタさんは、間違いなくタフな試合をして素晴らしかったと思います。自分たちの結果は残念ですが、今日の後半は、14人という中でも我々を圧倒するパフォーマンスをされたクボタさんに対して、「素晴らしいです」という賞賛の言葉を贈りたいと思います。

日和佐篤 共同キャプテン
お疲れ様でした。まず始めに、クボタスピアーズの皆さん、おめでとうございます。次のサントリー戦に向けて頑張ってください。
勝ち続けることの難しさを痛感しています。いつかは負けるときが来ますが、非常に残念に思います。今いるメンバーで試合をするのは最後になりますが、次のステージに向かっていきたいと思います。

Q.ブレイクダウンのところで、予期しない反則を取られたようだが。
日和佐共同キャプテン
レフリーとのコミュニティ不足のため、思っていないところで取られましたが、自分たちがコントロールできなかったことが反省点です。

Q.クボタのプレッシャーは感じたか。
日和佐共同キャプテン
ディフェンスラインが早く上がってきて、ブレイクダウンで苦しみました。神戸に対してプレッシャーをかけて来るとは思っていましたが、予想以上に激しいプレッシャーを受けました。

Q.相手が14人になってから、選手たちには戦術をとるよう伝えたか。
フランクリン共同キャプテン
自分達としては、自分たちのプロセスを踏んでいこうと話しました。一つ一つのプロセスを積み重ねてフィニッシュまでと考えていましたが、フィニッシュまでの部分で、最終的に自分たちがターンオーバーで相手にボールを与えてしまったという結果になってしまいました。

Q.いつもの神戸よりミスが出たように感じたが、(原因は)試合の中で起きたのか、準備のところで起きたのか、どのように分析するか。
ディロンHC
自分としては五分五分だと思います。もちろん、クボタさんのプレッシャーもありますし、自分たち自身がミスをしている原因でもあります。

Q.立ち上がりに連続トライを取られたが、失点の原因は何だと思うか。
日和佐共同キャプテン
予想通りのアタックではありましたが、自分たちのドミネート(支配)の部分で少しトラブルがあって連続トライを取られました。

Q.リーグ戦で山中選手が生かせず、つまりながらのフィニッシュとなってしまったが、どのような原因が考えられるか。
日和佐共同キャプテン
映像を見てから、分析したいと思います。

Q.今季は全試合通して、ハンドリングエラーやフィジカルで負けている部分が見られるが、チーム作りで難しかったのか、どういう原因があると考えられるか。
ディロンHC
いくつかあると思いますが、一番目として、新しいチームで間違いなく成長している部分はあります。二番目とか簡単には言えませんが、先週からの準備の部分で、選手たちの努力が足りなかったとは思いません。ただ、精度の部分で自分たちが完成しきれていなかったと思います。

Q.クボタさんとは練習試合等でも対戦しているようだが、過去のシーズンと比べて、実際に試合をしてみて、今季のクボタさんが強くなったところはどんなところか。
日和佐共同キャプテン
もともとフィジカリティのあるチームですが、その中で(今季は)スキル、チームの一貫性があると感じました。

Q.相手が14人になってから上手く時間を使うようになり、神戸としてはペースを速めたかったと思うが、そのところは。
日和佐共同キャプテン
(相手の)時間の使い方が上手かったのが正直なところです。その中で、自分たちのペナルティであったり、ゲームをスローにしてしまう原因は自分たちにあったと思います。

Q.シーズンを通して、コロナ禍でのチーム作りの難しさなどは感じているか。
ディロンHC
もちろんコロナに関してはパブリックなことですし、自分たちが思い描いていた青写真とは違うものになりましたが、起きてしまっていることは仕方がないので、その中で自分たちは(コロナ禍の中で難しさはありましたが)自分たちのラグビーをするという対応はできたと思います。


クボタスピアーズ
フラン・ルディグ ヘッドコーチ(HC)
まずは、自分たちのパフォーマンスについては、とてもハッピーです。特別な瞬間において、チームとしてシーズンを通してやってきたことができたことはすごく嬉しいですし、しっかりリカバリーをして、(今日の試合を)映像で確認して、来週からやっていきたいと思います。これが本来のクボタラグビーの全てだと思いますし、大事な局面でしっかり対応できたところ、立川をはじめ他のリーダー陣がチームを一つにしてくれ、80分間できたところで勝ちに持っていくことができたと思います。また来週から大事な試合が待っておりサントリー戦に備えていきたいと思いますが、今日に関しては祝いたいと思います。

立川理道 キャプテン
今日、エコパスタジアムに来てくれた5,000人強のたくさんのファンの応援が力になりました。80分間厳しい戦いでしたが良い試合ができました。しかし、ここで終わりではないですし、試合はまだ続きますので、しっかり自分たちで勝利を勝ち取れるように良い準備をしてサントリー戦を迎えたいと思います。

谷口和洋選手
急遽メンバーになって緊張しましたし、皆がメンタル面でフォローしてくれて今日の結果に繋がったと思います。

ゲラード・ファンデンヒーファー選手
今日のパフォーマンスについては、選手全員が体を張って、ハードワークした隣にいるブラザーのためにやって、神戸さんに何もさせないということが成功に繋がったと思います。

Q.素晴らしい14人ラグビーだったと思う。レッドカードが出てから、後半はどのような戦い方を指示したのか。
ルディグHC
おっしゃるとおりで、立川をはじめ、コーチ陣全員が分かっていたのでそんなにおおごとではありませんでした。ボールコントロールと、全員で助け合ってしっかり動くというキーポイントを伝えて、あとは、立川たちがコントロールしてくれました。

Q.14人のシチュエーションで、グラウンドレベルでは自信を持ってプレーできていたのか、精神的にしんどかったか。
立川キャプテン
14人になってからは、やることは変えずにできたと思っています。試合を通してボールを保持しながらやっていこうと話しました。10番のキーマンがいないところに自分が入りましたが、頑張ってくれたのはFWですし、FWの努力のおかげで14人の中でも上手く戦えたと思います。

Q.14人になったところで、ブレイクダウンで苦しい場面があると、風上なのでもう少し蹴ってもいいのかなと思いましたが、ギリギリの展開の中での判断はどのように考えていたか。
立川キャプテン
グラウンドレベルの風の状況は正直難しくて、風上風下というよりは回っている感じなので、あまり気にしませんでしたが、自分たちがキックを蹴った際、神戸さんに良いカウンターアタックがあったので、そこから修正してボールを保持しながらいこうとチームには言っていました。

Q.14人でブレイクダウンを持ちこたえたと思いますが、どのように声かけをして、みんなの気持ちが落ちないようにコントロールしたか。
立川キャプテン
基本的には、今まで通りやることは変わらないと伝え、1人少ない部分では14人がハードワークする必要があることを共通認識で持っていたので、試合を見ても分かるように、みんなハードワークしていました。

Q.急遽先発になった谷口選手に、パフォーマンスに対して今日はメンタル状態をどうリードしたか。
立川キャプテン
彼は大学の後輩ですし、試合前はかなり緊張をしていたようですが、井上選手から長文のラインをもらっていたようです。彼もしっかり準備をして、急遽入ったチャンスにパフォーマンスを出せたことはチームとしても喜ばしいことですし、もう井上の出番はないのではないかと思います。(笑)

Q.リザーブの岡田選手ではなく、4年目で、リーグ公式戦では初めての先発の谷口選手を起用した理由は。そして、彼の普段の努力をどう見ていたか。
ルディグHC
井上が外れるときに、サントリーとの練習試合で谷口がしっかり良いパフォーマンスができると分かり、自分たちのボールをキープしたいというプランに谷口がしっくりきたので、谷口を先発で使って試合をコントロールし、ベンチワークで岡田をインパクトプレイヤーとして使っていくプランで谷口をセレクトしました。今日のパフォーマンスは素晴らしかったですし、チーム文化としてお互いに助け合って、彼もしっかりやってくれたと思います。

Q.最後のPGの前の場面で40m位のラインアウトの選択は結果PGになったが、トライを取りにいく場面だったということか。
立川キャプテン
基本的に、ペナルティをもらったときに、ラインアウトからのモールでスコアを狙いにいけるという話をしていましたから、タッチに蹴ってからのアタックのプランを考えていました。結果的にペナルティをもらったので、そこからはPGを狙いました。

Q.最後のシーンは涙ぐんでいるようだったが、どのような感情だったか。
立川キャプテン
ホネティ選手が抱きついてきて自分の耳元で叫んでいたので、感動よりもうるさ過ぎて冷めました。(笑)

Q.井上選手の状態は。
ルディグHC
今日の試合に出すかどうか判断を引っ張ったが、発熱も昨日の夜の時点では熱は下がりました。来週に関しては出られると思いますが、また来週チェックします。

クボタスピアーズ広報
PCR検査は陰性を確認しております。

Q.公式戦の出場機会がない中で、大一番に出るのも大変だったのに、コンビを組むハーフ団の1人がいなくなってしまって、実際どのように意識をしてプレーしていたか。
谷口選手
自分一人で、どうこうしたというのではなく、立川キャプテンをはじめ全員が全員やるべきことを話し合ったり、プレーの選択の話し合いをして、ハードワークできたところが良かったと思います。

Q.グラウンドでのインタビューでも、日本語で静岡のことを話していたが、以前、静岡に居た思いもありつつ戦ったのか。
ファンデンヒーファー選手
おっしゃるとおりで、浜松まで新幹線に乗ってここまで来る間に、磐田で過ごした思い出もよみがえったし、(エコパで試合をした)自分にとって意味のある場所でもあり、ヤマハのサポーター、静岡のファンを思い出したので、自分のパフォーマンスの助けになったと思います。静岡で有名なそばとうどんを食べてエネルギーも十分蓄えました。

Q.逆転された後、どのようなメンタルで最後の5分間を戦ったか。
ファンデンヒーファー選手
ラスト5分に関しては、キックしてからもまだ時間はあったという感覚があり、FWがボールをキープしてくれていたので、フルバックとして何かあったときに援護に入れるよう常にオンの状態でいました。

Q.最後のキックは風が回っていたようだが、どういうところに注意して蹴ったのか。それと、(母の日にちなんだ)ピンクのソックスはキックに力を与えたか。
ファンデンヒーファー選手
ピンクのソックスは色も明るいですし、足が速く見える。実際、母親を意識しましたし、自分を育ててくれた人、人生に関わってくれた人、サポートしてくれた人という意味では力になっていました。今日は義理のお母さんの誕生日でもあるので、こういう結果になってうれしいです。

Q.風の影響の方は。
ファンデンヒーファー選手
1本目は左から流れましたが、それ以降は風の影響は感じませんでした。

Q.初先発が超ビッグゲームで、先輩の井上さんからは長文のラインが届いたとのことですが、どういう内容かということと、母の日の思い出があれば。
谷口選手
自分は、井上選手を大さんと呼んでいるのですが、大さんからはメンバーに関するメッセージが来て、今日のホテルから会場に来るまでの間に熱いメールが来ました。いつも熱い気持ちを持っている選手なので、その気持ちを受け継いで、大さんに今日の試合でプレッシャーをかけられたと思うので(大さんは)焦るのではないかと思います(笑)。
母の日に関して、母には感謝をしています。関西の試合ではいつも応援に来てくれますし、自分の知らないところでもサポートしてくれていると思いますので、感謝を忘れずにやっていきたいです。

Q.トヨタ戦で後半にキックを2本外し、逆転されるという試合があったと思うが、その試合を通じてキックの重要性を再認識したことで、この試合に向けてどのように調整したか。
ファンデンヒーファー選手
トヨタ戦に関しては、自分の中でも残念でがっかりしました。自分も気持ちが良くないし、チームも負けてしまいました。その後から練習後にキックの練習をしましたが、数ではなくて自分が納得できるまでやって、チームが同じ状況になったときに同じことをしないという形で自分はやってきましたので、ゴールを決められて嬉しいですし、ラッキーでした。

Q.14人になってから、試合が止まるシーンがあったりと時間の使い方が上手いように見えたが、そのあたりどのようにチームでタイムマネジメントをしたのか。
谷口選手
(ラグビーは)激しいコンタクトスポーツなので、自主的に痛がることは一切なく、プレー中に起こることに対してレフリーの判断で止まることもありますし、自分たちがコントロールするところではないです。勝利のためにチャレンジしていこうとは話していました。

(文責:静岡県ラグビーフットボール協会 小林聖子)

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