1月9日(火) 仙台高専・名取 vs 奈良工業高専 全国高専大会 決勝
レフリー:四辻順一朗(関西協会)
アシスタントレフリー:阪本浩助(関西協会) / 城間祐斗 / 岩田直剛
仙台高専・名取 | 奈良工業高専 | |||
3 | FULL TIME | 45 | ||
3 | 前半 | 19 | ||
0 | 後半 | 26 | ||
詳細(日本協会公式) |
マッチサマリー
ラグビーとは一歩でも前進し、得点を取り切ることを是とする。結論を先に述べるならば、FWが愚直に縦に出、スピード豊かなBKが相手DFへ突き進んでいく奈良高専の姿は、ラグビーの基本を具現化するとともに高専ラグビーの新たな可能性を見出したものであったと言える。
決勝戦は、厳しい寒さ且つ時折強風となる中、風下に位置する奈良高専の先蹴で始まる。
緊張を解すべく互いに積極的なプレーを試みるが、ミスが目立ち思うようなゲーム運びが出来ない。
いち早くペースを掴んだのは仙台高専。9分にSH9秋山が奈良陣内に切り込むと22m付近での反則を誘い、PGチャンスを得る。SO10太田が確実に決め3-0と先制する。
これで目覚めたのか、奈良高専は14分に連続ラックでフェイズを重ね前進、最後は仙台陣内左中間にPR1宮川がT。Gも成功し3-7と逆転する。
一進一退の攻防が続くも、連続の縦攻撃でリズムに乗った奈良高専は22分、仙台陣ゴール前からのLOモールを一気に押し込み、PR1宮川が連続T。Gも成功し3-14。33分にもBK展開からブレイクダウンを繰り返し、最後はSH9八方がT。G不成功ながら3-19と突き放す。一方、前半終了間際のアタックでトライチャンスを迎えた仙台高専だったが、LOからのケアレスミスで加点出来ずにハーフタイムとなる。
後半、風上に立った奈良高専。キックチェイスに3枚使い、確実に仙台高専逆襲の目を摘む、相手FWの突進を粘り強く且つ鋭利なタックルで防ぎ切るなど隙は見せないが、アタックでは肝心な所で反則を犯し、得点出来ない状況が続く。
53分、キックによるエリアマネジメントに勝った奈良高専が、LOからCTB12中村の突破で一気にゴール前に。モールを押し込み、最後はNO.8甲元が左中間にT。G成功し3-26とする。更に奈良高専は58分、FWがコンタクトを厭わず前進するとBKがスピードに乗ったランで呼応、最後はFB15淺草がダメ押しのTを決める。(G不成功3-31)61分、70分にもそれぞれ加点し、最終スコアは3-45と2年ぶり6回目の優勝を飾った。
強豪校に有力選手が集中し、学校間の実力差が開きつつある高校と比して、学業が最優先の高専各校においては、年齢による体格差や競技意欲を保つべく様々な苦心と工夫がなされている。前回大会で仙台高専に14-15で敗れた2023年1月5日をゼロ日として再始動し、且つ先人の築いた部の歴史に日々の練習を積み重ねた奈良高専(森監督談)をはじめ、各校のラグビーにかける情熱が、高専及び学生スポーツを支えていることを再認識した4日間であった。
(文責 廣島 治)
会見レポート
仙台高等専門学校(名取キャンパス)
柴田 尚都監督
今日の試合は接点の勝負になるとチームに言ったのですが、奈良さんのフィジカル、スピード、それにミスのないアタックに完敗したという感じです。
相庭 啓佑キャプテン
前半からうちの流れになるようなコンタクトをしようと話しましたが、奈良さんの勢いが自分たちより勝っていて一気に流れを持っていかれたと思っています。
・昨年優勝してこの1年間の取り組みは、また連覇は意識したのか?
相庭キャプテン
連覇は意識していませんでした、5年生がたくさん抜けたので新しいチームとして一から作り直そうと取り組みました、デフェンスのタックルからの接点の部分を強化しないと優勝は難しいと考えていたので、そこを一番強化してきましたが、まだまだ足りないと感じました。
・前回は1回戦で奈良と当たって1点差で勝利したが、今年との違いは?
柴田監督
去年は最後に逆転して1点差で勝って、ラッキーなところもあったと思いますが、スピードがありミスの無いいいチームだなと思います、逆にこちらはミスだらけで自滅した感じです、それだけ奈良さんのプレッシャーを受けていたということです。
奈良工業高等高専学校
森 弘暢監督
仙台高専さんとは毎年のようにリスペクトして対戦させていただいていますので、先ずは仙台高専さんに感謝したいです。
前半は風下からのスタートで入りも悪く、ゲームが崩れそうになったのですが、デフェンスでよく我慢してくれたのが、後の展開につながったと思います。
甲元 陸羽キャプテン
昨年1点差で負けたので仙台さんを目標にフィジカルの強化を1年間やってきました、今日はそれが出せたのでとてもうれしいです。
・2大会ぶりの優勝で今の気持ちは?
甲元キャプテン
めちゃくちゃ嬉しいです、自分たちのやってきたことを出せれば絶対に優勝できると信じていました。
・フィジカルの強化とは具体的に?
甲元キャプテン
ウェイトの密度を濃くしてきました、例えば最後の1回をあげる時に周りにメンバーがサポートして限界を超える挑戦をしたりしました、入学当時はスクワットを90くらいしか上げられなかったのですが、今は160で、体重は70から85になりました。
森 監督
周に2回はマスト、できる限りは3回を目標にしてきました、ただボールを触りたい、ラグビーをしたいという欲求もあるので、その辺のバランスをとりながらモチベーションの維持に努力してきました。
・1年生が多く出ていましたが、緊張はしていましたか?
甲元キャプテン
前半は風下だったのでミスがあり、呑まれてしまったのですが、上級生が「大丈夫や」と声をかけて前半のうちに修正できました。
・この大会でOB達が練習でサポートしているのが印象的でしたが?
森 監督
大会期間中だけではなくて、本当にOB達が支えてくれて、週末にも練習を手伝いに来てくれます、ただ練習だけではなくメンタルの部分のケアもしてくれるのでそこがモチベーションの維持につながっています、現役とOBが一体となって運営するという形が出来ています。
連続して全国大会に出るようになってから、年の近いOBが練習相手になってくれて、また監督の私に言えないような悩みを打ち明けたりしてメンタル面でもサポートしてくれるという、良い循環が出来ています。
・今年のテーマは何を掲げて1年間やってきたのか?
森 監督
新チームのスタート時点でのスローガンは、Arousing Passion(情熱を掻き立てる)を掲げてくれました。
去年の敗戦から、とにかく相手がどうであれ自分たちのラグビーができるように、自分たちのラグビーとはデフェンスからスピードかあふれるラグビーを展開することで、そのためには出来るだけデフェンスの時間を短くして攻撃時間を長くできるようにアタックの練習もしっかりしてきました。
甲元キャプテン
今年1年間言い続けてきたことはエラーに厳しくというところです、試合を潰してしまうのは自分たちのエラーからで、去年の1点差の敗戦もエラーから自分たちの流れが作れなくて負けにつながりましたのでそこを言ってきました。