マッチレポート
前節、チーム初の開幕の連勝が3で途切れたNTTドコモレッドハリケーンズと、ここまで1勝4敗と早く2勝目がほしい日野レッドドルフィンズの戦いは、雨が降る東大阪市花園ラグビー場で行われ、熱心なファン約2400人が訪れた。NTTドコモは、取るべきところで得点し、一方の日野はハンドリングミス、ラインアウトでのミスなどが響き「勝てる試合」を落とした。
前半開始2分、NTTドコモは、相手陣に10mに入った右ラックから左へ展開。日野のディフェンスミスもありWTB⑪マカゾレ・マピンピを余らせノーホイッスルトライ。勢いに乗るかと思われたが、日野は相手ペナルティーからタッチキック。モールを形成し11分、G直前のラックからNo8⑧ニリ・ラトゥが右隅に押さえた。
18分にも自陣G前でのNTTドコモのパス回しでCTB⑬片岡将が好タックル。パスミスを誘いWTB⑪竹澤正祥のトライにつなげた。これで逆転。キッカーをSO⑩クリップス・ヘイデンから替えた日野は25分にFB⑮吉川遼がPGを確実に決め、15-7。
34分にはNTTドコモがトライを決め、15-12で折り返した。日野は試合を通じてSHのハイパントを有効に使ったが後半に向けハンドリングミス、ディフェンスの甘さが危惧された。
後半、どちらが先に得点するかが試合の趨勢に大きく影響する。
NTTドコモはWTB⑪マピンピのランニングからリズムをつかみ攻撃するが、日野もよく前に出るディフェンスで対抗する。
19分、相手のインテンショナルノックオンのペナルティーで後半からSO⑩ヘイデンに替わって入った㉒東郷太朗丸がPGを成功させ6点差。
NTTドコモは21分、WTB⑭茂野洸気、日野は25分、CTB⑫井川太貴がトライ。
迎えた33分、NTTドコモは相手G前10m左中間ラックからラックサイドにこだわって攻め、最後は26分からHO②牛原寛章に替わった⑯フランコ・マレーがトライを押さえて逆転に成功した。MOMには華麗な動きで観客を魅了したWTB⑪マカゾレ・マピンピが選ばれた。
記者会見レポート
日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ
1点差で敗れたが、1点の重みはチームとしていい学びの場になったと思う。1点をひっくり返すためにまた、来週からも準備をして臨んでいきたい。
堀江恭佑主将
こういう天候の中でたくさん応援に来ていただいてありがたかった。自分たちとしては戦い方は大きく変わることなく自分たちのやるべきことを80分できるかにチャレンジした。終わってみれば1点差だが、80分通して自分たちの手ごたえをつかんだ場面が多かったが、後半は我慢しきれないところなど反省するところは多かった。いい学びをさせてもらった試合だった。残り2試合負けられない試合が続くので成長できたといえるようにしたい。
Q:波の多かった試合だったということだったが、互角以上の戦いができたのでは
箕内ヘッドコーチ
ずっとシーズン当初からやってきたものはしっかり出ていた。そうした中でペナルティーやちょっとしたミスが1点差の形になってしまった。プロセスに関しては選手は80分間頑張ってくれ誇りに思っている。引き続き精進していきたい。
Q:NTTドコモと対等に渡り合えたことは
箕内ヘッドコーチ
リーグ戦の中でしっかり勝っていくことに関してはドコモ以外も同じなので、ドコモ相手だからということはない。勝てる試合を落としてしまったなあというところはある。
Q:ここまでシーズンが進んできてチームの成長の手ごたえをどのへんで一番感じているか
箕内ヘッドコーチ
きょうの試合に限らず、ここまでシーズン当初から一日一日積み重ねてきたことはチームにとっての財産であり、成長した部分だと思う。これを継続してさらに高みを目指していきたい。
Q:技術的な面、戦術的理解など具体的には
箕内ヘッドコーチ
特にきょうは相手に対してプレッシャーをかけたところがいくつかあったが、夏から全員が同じ絵を見てやってきた結果だと思い満足している。
Q:堀江キャプテン自身は成長している部分はどのあたりに手ごたえを感じているか
堀江主将
1試合1試合成長を実感しており、特にディフェンスで相手にプレッシャーをかけるのは一貫性を持って今シーズンやり続けており、成果が出ていることは感じている。
Q:さらに積み上げたい部分は
堀江主将
(後半はスクラムはすごくよかったが)勝負どころのラインアウトなどFWのアタックの起点はまだまだ良くなると思う。
川井太貴選手
前半からディフェンスで前に出ることができ、相手にプレッシャーをかけることができ、いい試合ができたと思う。最後に勝ち切れなかったところが今後の課題だと思う。
Q:惜しいところで勝利を逃したが、何が足りなかったか、どのへんを詰めれば勝ち切れたか
川井選手
キックを使って敵陣に入って、相手にプレッシャーをかけ、マイボールになったときにしっかりスコアして帰るというところが足りなかった。トライを逃したりコンバージョンやショットを外すなどもったいないところがあった。
NTTドコモレッドハリケーンズ
ヨハン・アッカーマンヘッドコーチ
まず勝てたことに感謝している。ただフラストレーションの溜まる試合内容で、判断や地域ごとの戦い方で、いつパスをするべきかいつ蹴るべきなのか、ペナルティーでも判断がぜんぜん良くなかった。良かった点は取るべきときに得点でき、我慢強くやることができた。厳しい体験をどこかで挟むことは必要で、チームとしては伸びしろがまだあると感じた。
ローレンス・エラスマスキャプテン
コーチが言ったように勝ったことはうれしいが、日野がハードに来ることはわかっていたし、雨で厳しい条件になった。後半にベンチから出てきた選手たちが勢いを与えてくれ、助かった。
Q:今シーズンスリリングな勝利が多いが勝ち切れている要因は
アッカーマンヘッドコーチ
ファイトすることを徹底して鍛えてきた。あきらめないことプライドを持ってプレーをすることをプレシーズンからずっとやってきた。多少なりとも成果は出ていると思うが、まだまだ気を抜けない状況でビッグチームとの試合が残っており、そこでどう戦うかだ。
Q:マピンピ選手のパフォーマンスは
アッカーマンヘッドコーチ
クオリティーの高いプレーを毎回見せてくれる。彼に限らずメンバー外の全選手がプレーをしない週でもハードワークをしている。練習から準備をしているのでいつ使ってもパフォーマンスを発揮してくれるようになればいいと思う。
Q:フラストレーションの溜まる試合の中でどのように声をかけ、集中力を保ったか
エラスマスキャプテン
自分たちでコントロールできることしかコントロールできないのでリーダーとして我慢強く継続することを意識して声をかけた。先の場面でのプレーの指示などTJ・ペレナラ選手もいい声をたくさんかけてくれた。
Q:SHを入れてペレナラ選手をSOに起用したが
アッカーマンヘッドコーチ
TJは10番もできるので元々プラン通り。きょうに限らずベンチにSOができる選手がいない場合を想定して、TJが後半は10番をカバーする練習はしている。前の試合でも準備はしていたがその必要がなかった。きょうはたまたま冷静な浜野を入れてTJとそろって冷静な判断ができると思い入れた。
TJ・ペレナラ選手
ごちゃついた試合になってしまった。しっかり1週間、この試合に向けていい準備ができていたが、練習での精度はなにひとつ出なかったしいい判断もできなかった。本来自分たちが掲げているスタンダードとは程遠い内容だった。リーグは続くので全体改善していかなくてはいけない。
マカゾレ・マピンピ選手
やりたかったことが全然できなかった試合だった。いい準備をしてきたが、それに沿ったパフォーマンスができなかったのが悔しい。来週から分析をしっかりして正していかないといけないことが山積み。
Q:やりたいことができなかった要因は
ペレナラ選手
日野はキックなどいいプレーをしていた。両方、自分たちの狙った通りの形をつくることができていなかったし、プレーシェープに入るのが遅かったり判断を間違えたりしていた。細かいところだったと思う。
Q:チームリーダーとしてグラウンド内で選手を集中させるためにどんなことをしたか
ペレナラ選手
実際はマピンピ選手がよくリーダーシップを発揮してくれた。ボールを持って走るのが目立つが声かけを意識できる人で、シンプルに物事をとらえていい感じで方向性を示してくれる。天候を考えて1、2歩深くなってハンズで通すことができるという指摘などをしてくれ貢献が大きい。
Q:ロースターの関係で試合に出る機会が少ないなか、出る試合に集中できる普段のメンタル、フィジカル部分のコンディションづくりは
マピンピ選手
日本の独自のルールは理解しているし、コーチも聞いたら答えてくれるので全く不満に思うところはない。自分はチームファーストでしか物事を考えていないので、チームにとって何がベストなのか、自分が何ができるのかを考えながらやっている。チームファーストでコンディションを合わせ、どこかでチャンスが回ってくるのはその枠があるからなので、常に出られる準備をしている。
Q:初のMOMの感想は
マピンピ選手
とても照れる。ちょっと意外だったがうれしかった。いつもらってもうれしいものでまた取れるように今後も頑張る。
Q:子どもたちの「マピンピコール」は
マピンピ選手
もちろんうれしい。僕だけではなくチームの応援もそういうふうにしてほしい。
Q:50m、100mのベストタイムは持っているか
マピンピ選手
正直言ってわからない。計ったこともないし、気にしたこともない。(ペレナラ選手が)今から頑張ったらオリンピックにでれるのでは・・・(笑い)
Q:反省点が大きいが勝ち切れたのは
ペレナラ選手
試合にどう臨むかが大切で、きょうは試合の入りだけはよかったが、その後20分間で何度もペナルティーを与えてしまって相手を勢いづかせてしまった。きょうはたまたま何とか勝つことができたが、神戸製鋼やパナソニックなどプレーオフでもっとレベルの高いチームと当たるとそんなことをしていると勝つことが相当難しくなる。まずは規律を守る、規律を良くするという点を改善していかないといけない。
Q:きょう得た収穫はあるか
ペレナラ選手
やっていた印象では規律に限る。規律をもっと良くしてペナルティーを減らさないといけない。
Q:ゲームプランが思い通りにいかなかったときにリーダーとして声かけで大事にしていることは
ペレナラ選手
問題を認知するのは誰でもできるが、解決策を出すのを意識して声かけしている。その点ではマピンピが明確な指摘をしていた。日野がラインスピードを上げてきて捕まることが多かったので、普段よりラインを1、2歩深くするなど解決策を出すことを意識して声をかけるようにしている。
Q:ラインを深くするのはいくつかプランがあって選んだのか、これしかないと思ったのか
マピンピ選手
試合では状況を把握することを常に意識している。普段ならミーティングをして分析したら誰でもわかることだが、グラウンド上で感じていること起こっていることをできるだけ早く捉えて、その状況に合わせた一番必要なことをアドバイスできるよう心掛けている。
(文責:大阪府協会 丸井康充)
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