マッチレポート
新型コロナ感染拡大の影響で、全チームが十分な準備期間がなく臨んだ今シーズン。各チームの首脳陣からは、「試合ができる状態」にまでチーム力を高める苦労やコンディショニング調整の難しさが語られている。冬型の気圧配置となり、「生駒おろし」が吹く花園ラグビー場では、準々決勝4試合のうち2試合が行われた。
第1試合は関東リーグ戦1位、16大会連続18回目出場の東海大学と関東対抗戦4位、22大会連続28回目出場の帝京大学が対戦した。お互いに強力FWを擁して、リーグ戦を1敗(最終の日大戦を辞退)で終えた東海大、対抗戦2敗ながら直接対決で慶應大に敗れたため4位に終わった帝京大。東海大は3回戦までシードされ、帝京大は3回戦の同志社大戦が中止になり、ともに今大会の初戦となり注目された。
がまんくらべ。試合はお互いが粘り強いディフェンスで相手に得点を与えないロースコアの展開になった。前半、均衡を破ったのは東海大。相手のノットリリースザボールの反則で得たPGを左WTB⑪杉山祐太が確実に決めて先制した。しかしその後は、帝京大が積極的に前に出る攻撃でほとんど相手陣で試合を進める。一方、東海大は好タックル、ゲインを切らせないディフェンスが光った。
迎えた34分、この試合の趨勢に大きく影響するプレーが生まれた。東海大G近くのスクラムでFKを得た帝京大は迷わずスクラムを選択。帝京大FWが強烈なプレッシャーをかけると東海大FWがたまらずコラプシング、認定トライとなった。前半は両チーム合わせてペナルティーが12とタックル後の反則が目立った。
後半も帝京が相手陣で試合を進めるもミスや反則で並みに乗れない。14分、帝京大は徐々に甘くなった東海大のディフェンスをついた。G前20m付近左中間ラックから右に展開。攻撃する人数は2人、防御側の態勢は整っていたが右PR③細木康太郎がディフェンスをうまく自分に引き付けつつWTBの走るスペースをつくり、右WTB⑭木村朋也にパス、右中間に押さえた。
東海大は26分、後半6分にフランカー⑥ジョーンズ・リチャード剛に代わった⑰土一海人が押し込んだモールからトライを奪い6点差。お互い一進一退の必死の攻防を展開した。
しかしノーサイドを告げるフォーンの鳴動後、東海大は必死にボールをつないだが最後に痛恨のノックオン。万事休した。
試合後コメント
東海大学 木村季由・監督
大学選手権初戦になったが、リーグ戦で培ってきたものをきょうのゲームで全て出しきる思いで、全員ひとつになって臨んだ。帝京大の強みである強いプレッシャー、フィジカルをしっかりディフェンスすることでゲームをつくっていこうとした。80分間、最後まで自分たちのおもいを切らさずプレーを続けることはできたが、ちょっとした所でミスが出た。きょうのゲームは特別な思いの中、勇敢に最後まで戦ってくれた学生たちを誇りに思う。負けはしたが自分にとっては大切な試合になった。結果として今シーズンのラストゲームになったが、ふさわしい試合ができた。
東海大学 吉田大亮・キャプテン
大学選手権開催に努力してくださった方々、運営関係者、ファンの方々に感謝する。(新型コロナの)リスクを負って尽力してくれた医学部、大学病院、健康推進室、感染対策室など多くの方々に支えられ最高のゲームができた。結果は負けたが、何かひとつでも自分たちに関わってくれた人たちに伝わるものがあればうれしく思うし、自分たちがやってきたことは間違っていなかったと胸を張って言える。新型コロナで苦しんでいる多くの方々に、それを乗り越えて元気にラグビーができている自分たちの姿を見て希望や勇気を持ってもらえればうれしく思う。この4年間でのベストゲームだった。負けてしまったが仲間を誇りに思うし監督、コーチ陣すべての人たちに感謝する。
Q.コロナの影響でリーグ戦を辞退したがいつから再開したのか?どんなふうにこの試合に臨んできたか。
木村監督
再開は12月12日から。日常の中で対策を厳格にやってきた中で感染が起こってしまったが、迅速に大学の関係部署の方々が対応してくれたことできょうを迎えることができた。言い訳にするのではなく、この試合に向けてできることを最大限に尽くそうと取り組んできた。いろんなことがあったが、こうやってきょうを迎えられたことが全てだと思う。
Q.活動できなかった期間、活動中どんなことを意識してやってきたか?どんな声掛けをしたか?苦労はなかったか?
吉田キャプテン
1年間積み重ねてきたものは大きなものであり、活動できない期間の1週間や2週間で失うものではない。これまで培ってきたもの、1年間で通してやりきってきたものをこの1週間でもう一度質を上げることに拘った。焦りはなく今までやってきたことを信じて自分たちの強み、自分たちの形にフォーカスを当ていい準備をしてきょうの試合に臨んだ。苦労した点はなかった。
Q.前半スクラムで苦しんで、後半立て直せたが?
東海大学 山田生真・FWリーダー
帝京大はシンプルだが重さや組む強さはパワフルで、(前列)3選手が調子のいいスクラムを組んでいてこちらが改善するのに時間がかかった。後半は、「ヒットに勝ってまっすぐ組む」ということにフォーカスを当てて対応した。相手に疲労がきたとき、自分たちの形が出るようになった。
Q.コロナの影響で活動停止後に普段していなかった練習などをしたか?
木村監督
特別に何か違ったことというよりは、学生の安全を確かめた上、コンディションに注視して試合に臨めるように心がけた。
帝京大学 岩出雅之・監督
いろんな意味で感謝しながらきょうのゲームに臨みたいと思った。同志社大学も東海大学も大変な苦しい状況だったと思う。その中でゲームをさせてもらい勝利できたことは、「(両校の)思いをしっかり生かしてより頑張らないといけない」というのが一番の感想だ。前後半を通して、双方とも粘り強い良さもあり甘いミスもあり一進一退のゲームだったが、学生なりに一生懸命タックルに行っていたと思う。少ないチャンスを生かして勝利することができた。反省する点は多々あるが、昨年行けなかったベスト4に行けることを喜んで、ここから成長できるような挑戦をしたい。
帝京大学 奥村翔・バイスキャプテン
80分間、緊迫した集中力のあるゲームだった。勝ててほっとしている。一戦一戦負けたら終わりの戦いで、このように粘り強く我慢して勝ったのは意味のある勝利だった。
Q.後半35分ごろどんなことを意識していたか?
岩出監督
ボールを手放すような軽いプレーを選択しないように、ボール継続の選択をしてほしかった。簡単にボールを蹴ってしまったり、伝わっていないかなと思ったが、足にきている選手もいたのでそういう選択をしたのかもしれない。指示はボール継続だった。
Q.勝ち切れた要因をどう見ているか?
岩出監督
ゲーム感やコロナ禍の中で大変な中、実際に発生したチームがあり、不戦勝や不戦敗になった。東海大もリーグ戦終盤で影響が出たが、我々も緊張感を持っていた。出場できないとかコンディションが悪いなど心の状態において選手たちもいろんな苦しみ、大変さを感じていたと思う。こういった中でのクロスゲームというのは、ゲームの内容の出来、不出来だけではなく学生自身の一生懸命さを讃えてあげたい。同志社大も東海大の思いをしっかり次に生かしたい。精神的なタフさ、ゲームができるよろこびを学生たちが体現し、大切にしてほしいとの思いが強い。
奥村バイスキャプテン
しっかり準備してきたタックルとディフェンス、アタックでペナルティーをしないことを80分間貫けたことが勝因だと思う。
Q.同志社大が辞退し、どういう気持ちでゲームに臨んだか?
奥村バイスキャプテン
同志社大の分も背負って戦おうと思っていた。
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