マッチレポート
新型コロナウイルス感染症の影響により、延期となっていたジャパンラグビートップリーグ2021がついに開幕。
昨日に引き続きここ東大阪市花園ラグビー場は初夏の陽気の下、最後のトップリーグの開幕を待ちわびた多くのラグビーファンの前で、日野レッドドルフィンズ対ヤマハ発動機ジュビロがヤマハFB⑮サム・グリーンのキックオフで幕を開けた。
約一年ぶりの公式戦また開幕戦ということもあり、前半は両チームともハンドリングエラー、特に日野に反則が目立ち互いにペースをつかめない。
ようやく均衡を破ったのはヤマハ。日野LO⑤ディネスバラン・クリシュナンの危険なタックルによるシンビン直後の前半26分。ゴール直前右中間ラックより右へ展開、SH⑨矢富勇毅からの兄弟パスを受けたWTB⑭矢富洋則が右隅にトライを挙げ先制した。
その後も両チームともなかなかペースをつかめていなかったが、ヤマハは34分にハーフウェイライン付近でラインブレイクしたHO⑯江口晃平のパスを受けたLO⑤フレッド・ヒュートレルが左サイドを駆け抜けてトライ。0-14として前半を終えた。
一方の日野は後半開始直後の4分、22ml付近の中央ラックよりSH⑨オーガスティン・プルが大きく右に展開、ロングパスを受けたCTB⑬片岡将がタックルを振り切って右隅にトライ、5-14と反撃を開始した。
しかしその後はヤマハペース。LO⑤ヒュートレルのこの日2本目のトライの後、高速バックスを中心に連続して得点を挙げる。
日野も後半中盤、キャプテン⑨プルがCTBに入って2トライを返すが時すでに遅し。
後半6トライを挙げたヤマハが17-52と大量得点を挙げて開幕戦を飾った。
開幕戦ということもあり、両チームともハンドリングエラーや反則が目立った。特に前半は膠着状態。底力に勝るヤマハ発動機がいち早くペースをつかんで初戦を飾った。
FW戦では再三、日野がスクラムのヤマハを凌駕する場面も見られて目が離せない。
新戦力の加入、台頭で大きくシーンの変わった最後のトップリーグシーズン。次節以降もさらにハイレベルなゲームを両チームには期待したい。
記者会見レポート
日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ
まずこのような状況の中で試合をさせていただいたことに関し、チームを代表して関係者の皆さんに感謝する。シーズンが始まってここに来るまでのプロセスには非常に満足している。今日の結果が全てではないし、着実にチームの財産となっている。選手は最後まであきらめずにプレイしてくれていて、去年よりも大きな成長を感じる。試合には残念な部分はあったがこれをチームの糧にしていきたい。
オーガスティン・プルキャプテン
チームとして負けはしたが、良い方向に向かっていたと思う。残念なのは今日のゲームで本来ならもっとレベルの高い私たちのパフォーマンスを皆さんにお見せすることができなかったことだ。今後はそれらを見ていただけるチームであると確信している。50分くらいまではしっかりとゲームの中でステイできていたが、その後はなかなか自分たちが思う通りのプレイができていない中、規律が守れないことに苦しみ得点できなかったことで学ぶことができた。とは言え、今回チーム全員のパフォーマンス、心構えには誇りを感じている。
北川俊澄選手
まずこのような状況下でラグビーができることに感謝している。今日の試合はFWとしてはセットプレイに自信を持てた内容となった。結果、試合には負けたが春から良い準備をしてきて、自分たちのパフォーマンスや良い結果が出た部分が沢山あったので、これを今後継続して生かしていきたいと思う。
Q:成長を感じた部分、残念な部分を具体的にお願いします。
箕内ヘッドコーチ
成長を感じた部分は、昨年も同じような対戦であったが昨年以上にセットプレイやディフェンス面では確実に成長の跡が見られ、本来ならそこで勝負したかった。残念な部分は、得点した直後に失点してしまう点で、そこがヤマハの集中力との差を感じていてチームとして学ぶべき点である。
Q:勝負どころ、特に前半にペナルティが多かった点は?
箕内ヘッドコーチ
今年、ここが一番の課題であり去年から苦しんでいる部分なので、ハーフタイムで後半に向けて修正した。本来なら前半からペナルティを減らす努力をして、レフリングにも対応していくべき点である。
Q:前半2分でのCTBジャック・デプラシーニ選手の交代の影響は?
箕内ヘッドコーチ
ラグビーをやっている限りケガは仕方ないものだが、起きたタイミングは想定外だったのでチームにも少し影響はあった。しかし代わりに入った選手を含めてチームで80分間カバーして頑張ってくれた。キャプテンのプルがSHから最後はCTBで出場してくれて、最後まで諦めずに戦ってくれたことが印象的だった。
Q:前半、スクラム部分で反則をとられるなどの一部の判定にどのように対処したのか?
北川選手
選手として判定はともかく、自分たちのやっていることに成果を見出していたのでそこには何の影響もなかった。
Q:プル選手の最後の連続トライの感想は?
プルキャプテン
直前のヤマハの得点時にスタンドの箕内ヘッドコーチから、このタフな状況下でスピードを見せろというメッセージがあった。こんな中でキャプテンとして自分のプレイで応えてチームを引っ張っていこうと考えた。トライをとれたことは自分にとっても良かった。FWを含めて全選手が誇りをもったプレイで続いてくれたので良かったと思う。
Q:今日のFWの良いプレイが得点に結びつかなかった原因は?
北川選手
セットプレイについては全体的にこちらの計画通り進んでいたが、前半のゴール前のラインアウトモールからのトライがとれなかったこと、リフトの精度やボールをロストしてしまった点が自分としては残念な点だった。その辺りで得点できていればチームとしての流れも変わったと思うので、来週に向けて整備していきたい。
ヤマハ発動機ジュビロ
堀川隆延監督
昨年のトップリーグ中止を受けて以来約一年ぶりの開催に関して、まず各協会の皆さんにお礼を申し上げる。今日のゲームの結果は「開幕戦は難しい」の一言である。自分たちの力を出し切れる場面が多くあったのに出し切れず、まずその辺りをきちんと分析し、選手たちとも話をして次節のリコー戦に向けて準備していく。本来ならこの席には大戸キャプテンとMOMの選手が並ぶはずであるが、今日のゲームにおける私の中でのMVPとして江口を連れてきている。日野のケガはあったがきちんとゲームを作ってくれたのは江口で、今後も成長を期待したい。
大戸裕矢キャプテン
試合内容としては久しぶりの公式戦で開幕戦、試合前から何が起こるかわからないことは予想されていたが、やはり選手の緊張や予測できないミスなどが沢山あり、次に繋がる良い課題が見えたのでしっかり修正して良いマインドで来週に挑んでいきたい。余談だがFLの粟田祥平選手とリザーブの石塚弘章選手は27、29才にも関わらず「初花園」で良いプレイをしてくれたということで、ヤマハは夢のあるチームであると思う。
江口晃平選手
今日はリザーブという立場でいつ出るかわからず、いつ出てもいいように準備はしていたが前半からの交代出場で、少し焦る気持ちはあったが落ち着いてプレイすることはできた。今日のプレイに慢心せず、来週、今後のシーズンに臨んでいきたい。
Q:今日の試合で、今シーズンのテーマである「ヤマハ・スタイル」が体現できたプレイや、ポイントなった場面は?
堀川監督
「ヤマハ・スタイル」はセットピースにこだわるスタイルである。まだスクラムには多くの課題を残したゲームであり評価できないが、ラインアウトに関してはここにいる江口選手のスローインが素晴らしく、そこからトライに結びつけることができたのは評価できる。
Q:BKでは縦のラインがきちんと確立されているが、大田尾コーチが抜けた影響は?
堀川隆延 監督
大田尾コーチは抜けたが選手たちときちんとコミュニケーションをとりながら進めていきたい。
Q:モールがヤマハの大きな武器の一つだが、今日のモールの評価は?
大戸キャプテン
モールはヤマハの大きな強みの一つだが何本か取り切れない場面があったので、そこは自分たちのプライドをもって伸びしろを伸ばしていきたい。
江口選手
ヤマハはモールにこだわっているので、まず自分はスロワーの立場できちんと役目をはたして次戦からもトライに結び付けていきたい。
Q:トップリーグの開幕が伸びたり、コロナ対策の徹底が求められたりしているがチームとしての対応は?
堀川監督
地元の保健所と連携して選手の行動を含めたガイドラインを制定・遵守することで、一人の感染者も出すことなく進めてきている。関係者の皆さんには感謝したい。
Q:前半、立ち上がり時にレフリングで苦しむ点があったようだが、選手たちと試合中どのような声掛けをしていたか?
大戸キャプテン
開幕戦なので様々なシチュエーションが予測されていたが、試合を通じてレフリーとはきちんとコミュニケートし、修正できていたのでネガティブにはとらえていなかった。次節以降も様々なレフリーにアジャストしながらヤマハらしいラグビーをしていきたい。
Q:メディアとしてはやはり五郎丸歩選手のことが気になるが、今後の起用方法は?
堀川監督
実は延期前の開幕戦のメンバーには予定していた。昨年度のリーグ戦中止以降もグラウンドに足を運んでトレーニング、準備をしていた後の開幕延期でメンタル的な面を継続することが難しかったと思う。今も良い状態でトレーニングに励んでくれているので、今後は必ず出場の機会はある。
Q:後半は続けて得点できていたが、ハーフタイムでどのような指示を行ったのか?
堀川監督
大久保直哉ヘッドコーチから選手に一言「エナジーだ」という言葉をかけただけで、あとはユニット単位の確認を行った。開幕戦の難しさから前半はなかなか思い通りのプレイができていなかったが、後半は自分たちがボールをもって動くと簡単に得点できると思っていて、ひとつ一つのプレイにエナジーをもって取り組むことを指示してもらった。
(文責:大阪府協会 石川 悟)
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