マッチレポート
「仕切り直し」。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約1カ月遅れ、待ちに待ったトップリーグがいよいよ開幕した。昨年は6試合で打ち切られ、選手たちはほぼ1年ぶりの公式戦となった。ファンの期待も大きい。今シーズンはレッド/ホワイト各グループに8チームが入り、総当たりの第1ステージを実施し、トップチャレンジの上位4チームを加えた第2ステージが行われる。決勝は5月23日東京・秩父宮ラグビー場で予定されている。
今季は、神戸製鋼にNZ代表のB・スミス、サントリーに同SO、B・バレット、トヨタ自動車にオーストラリア代表のマイケル・フーパー――などなど、綺羅星のごとく輝かしい実績を持つプレーヤーが各チームに加入、興味が尽きない。
ここ東大阪市花園ラグビー場では、神戸製鋼コベルコスティーラーズとNECグリーンロケッツが対戦。神戸製鋼は昨年、トップリーグカップで優勝、リーグ戦では実施された6試合に全勝した。今季は優勝候補の有力チームの一つに数えられる。一方、NECはリーグ戦では6戦全敗で波に乗れなかった反省を生かして今季に臨む。試合は、NECが最後まで試合をあきらめない粘り強い攻撃でノーサイド間際に2トライをあげ、9点差まで迫る健闘だった。ただ、お互いにタックルミスやパスミスがあり次節への課題となった。
晴天に恵まれたが西よりの風が吹くコンディションの中、NECの元イングランド代表SO⑩、アレックス・グッドのキックオフで試合は始まった。
NECはいきなりの1分、神戸は自陣ゴール前でBKS展開を試みたがパスミス。これに乗じたNECのFL⑦亀井亮依が出足良く押さえ、幸先よく先制した。神戸には暗雲が漂った。
神戸も反撃。8分には元U20NZ代表SO⑩ヘイデン・パーカーの前をよく見た絶妙のショートパントを足掛かりに最後は忠実にフォローしたPR①中島イシレリがトライを奪った。この後、神戸は11分、16分、26分、NECは20分、32分、40分とトライを挙げ、前半は28-26。試合の趨勢はわからない展開になった。
後半2分、神戸は10m中央付近のラックから右へ。右タッチギリギリを走ったNo.8⑧ナエアタ ルイから元NZ代表WTB⑭ベン・スミスにつなぎNECを突き放した。No8.⑧ナエアタ・ルイの変幻自在のポジショニングが目を引いたが、結局、このトライが勝敗の分かれ目になった。神戸は23分、35分にも得点し47-26。しかしあきらめないNECは懸命に反撃に出た。38分FL⑦亀井がこの日2つ目のトライ、42分のロスタイムにはFL⑥大石力也が押さえたが及ばなかった。
MOMにはタイミングの良いパスワークで勝利に貢献した神戸、SH⑨徳田健太が選ばれた。
記者会見レポート
NECグリーンロケッツ
浅野良太 ヘッドコーチ(HC)
トップリーグ開幕戦、非常に難しいなか行うことができ、多くの方々にご尽力いただき感謝している。又、会場やテレビ等の関係者の方々の応援にも感謝している。1年間、公式戦がないという初めてのことで、非常に難しい対応・適応が必要のなか、きょう出た23名がNECプライドを持って神戸に立ち向かったことを誇りに思う。この悔しい思いがチームを強くすること思うし、次節以降もマインドをもって戦っていきたい。
亀井亮依 共同キャプテン
きょう開幕を多くの方々のおかげで迎えられ、感謝している。試合に関しては非常に悔しい結果だ。プレシーズンを通してゲームの入りなどが課題だった。きょうは先制でき、グッドスタートはうれしい結果だ。最大の成果としてはこれだけ得点が取れたこと。ディフェンスにしてもアタックにしても、攻撃的なラグビーが初戦の神戸製鋼を相手にできたので、次節以降よりよい準備をしたい。
中嶋大希 共同キャプテン
神戸製鋼に対し、最終的に1トライ差は間違いなくいい試合だったが、次の試合でもゲームの入りに心掛けたい。
Q:スクラムやラインアウトなどのセットプレーの手応えは?
浅野HC
相手のセットプレーが強いので最初はスクラムでうまくいかないことが何回かあったが、80分間通して改善がみられた。FWがやりたいことが実行できたことはプレシーズンでも収穫があり、今後も強味として磨いていきたい。
Q:SOアレックス・グッド選手の加入で、チームの変化やコンビネーションの取り方は?
中嶋共同キャプテン
FWとBKをコントロールしてくれている。なるべく短い時間、分かりやすいワードでコミュニケーションを取るようにしている。コミュニケーションが取れていないところは修正し、次に活かしていきたい。
Q:神戸製鋼のディフェンスラインの裏にキックを蹴っていたが、その意図は何であったのか?
浅野HC
スペースにボールを運ぶことを意識していて、そのスペースが裏だった。スペースに蹴るアレックスがFWをうまくコントロールしていて、前がよく見えていたのだと思う。
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
デーブ・ディロン ヘッドコーチ
NECが我々にチャレンジしてきたが、最初にトライを奪われたことにより、チャレンジする側になった。約365日ぶりにトップリーグが開催できたことがたいへん良かったと思う。この試合で相手から学ぶことが多かったので修正し今後につなげていきたい。
トム・フランクリン 共同キャプテン
相手が自分たちにチャレンジしてきたので、本来なら相手に合わせてはならない状況のなかにあるのに、求めていたものではなかった。最終的に結果を得るものになり、今度はチャレンジされる側の立場になる。
ベン・スミス選手
ラグビーがまたプレーすることができ嬉しく思う。フィジカルなバトルができ、この試合から多くのことを学ぶことができ、相手がいろんなエリアからチャレンジしてきたことを学ぶことで、自分たちの成長につながっていくと思う。
Q:ベン・スミス選手、本日の試合と初トライの感想は?
スミス選手
日本でラグビーをすることをエキサイティングに待ち望んでいた。そのなかで自分はチャレンジに勝っていかなければならないし、神戸製鋼は誇り高いチームなので、自分自身も努めなければならないと思っている。長い間トップリーグも自分自身もプレーができていなかったので、この日を楽しみにしていた。相手にチャレンジされ我々も成長していかなければならない。トライをとることは常に嬉しいが、コロナ禍でトップリーグが再開できたことの方が嬉しい。
Q:負傷退場した中島イシレリ選手の様子とディフェンスの課題と評価は?
ディロンHC
怪我での交替で、まだメディカルの詳細は聞いていないので、ケガの現状が今どこまでなのかわかっていない。
ディフェンスは今後、必ず成長していくと思う。1月11日のホンダとの練習試合から対外試合ができなかったが、練習では得られないことができ、修正し上げて次に活かしたい。
Q:FW選手のシンビンで、ベン・スミス選手がFWに入っていたが感想は?
スミス選手
以前、練習でFWコーチのアドバイスを受け、スクラムはプッシュを心がけた。後にペナルティが取れたので良かった。
Q:厳しい状況があったと思うが、どのような行き違いがあったのか聞かせてもらいたい。
フランクリン共同キャプテン
自分たちだけの練習が多く、他のチームとする機会がなかった。その中でテストされ、自分たちがチャレンジしなければならない状態だった。そこから何度も言うが成長していくことが課題である。
Q:最後の10分でボーナスポイントを阻止されたが戦術的での課題は?
フランクリン共同キャプテン
ボーナスポイントをネガティブに捉えるのは本人次第だと思うが、勝ちで終わることができたので、さらに成長して戦っていきたい。
Q:1月の隔離期間中の難しさや今後の影響について考えを聞かせてほしい。
ディロンHC
間違いなく我々は新しい経験をし(新型コロナ禍は)世界中が対応しなければならないことで、オンラインを通じ選手が孤立しないように練習を行えたと思う。今の状態は、先ほどからの繰り返しになるが、チャレンジされることで今より成長していくことだと思う。
Q:試合中のディフェンス、アタックで修正する課題は?
ディロンHC
うまくいかなかったことが多くあったが、この1週間の練習はよい準備ができていた。しかし練習を試合に変換することを考えると、より良い解答があると思う。ディフェンスに関しては、相手のチャレンジを最初のタックルで止めきれていなかったことが課題である。アタックでは、スタートでスペースを見つけてトライを取り切ることもできよい部分もあったが、相手のプレッシャーでミスすることも多く、今後に成長していく部分でもある。コーチ陣が映像を見て次の試合に向けて準備し、練習に取り組んでいきたい。
Q:SHの徳田選手、リ・スンシン選手の評価は?
ディロンHC
徳田は入団して5年。今日がデビュー戦で、(評価は)マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたことで分かると思うし、スンシンも初デビュー。練習で日々、成長を遂げている楽しみな選手で期待している。
(文責:南 昌宏、丸井 康充)
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