マッチレポート
快晴の聖地花園では、トヨタ自動車ヴェルブリッツとクボタスピアーズの対戦。両チームとも5勝1敗で迎えたプレーオフ前最後の戦いとなり、レッドカンファレンス2位をかけて熱戦を繰り広げた。
試合はトヨタ自動車ヴェルブリッツのキックオフでゲーム開始された。
前半5分、トヨタのペナルティからクボタスピアーズが展開し、HO②マルコム・マークスが押し込み幸先よく先制。ゴールも決まり0-7。
トヨタも11分、ハーフウェイ付近のマイボールスクラムからバックスへ展開し最後はWTB⑪ヘンリー・ジェイミーが左隅にトライし5-7と追い上げる。
しかしクボタは16分、相手ゴール前5m、SO⑩バーナード・フォーリーが転がしたキックをCTB⑬テアウパシオネが拾いトライ、ゴールも決まり5-14とした。
20分、トヨタはクボタ陣10mライン中央付近でペナルティを得、SO⑩ライオネル・クロニエが落ち着いてゴールを決め8-14と取って取られての展開だった。
その後はお互いに攻め合うもミスが続き得点に結びつかず。このまま前半終了かと思われた前半39分、トヨタはクボタ陣内ゴール手前7m付近でペナルティを得たがスクラムを選択。このスクラムで反則を繰り返したクボタPR③山本剣士がシンビンを受け一時退場となった。更に41分にもFL⑦ピーター・ラピース・ラブスカフニがシンビンを受け2人目の一時退場者を出したクボタは13人で戦う厳しい状況に追い込まれた。数的優位に立ったトヨタ、何度もゴール前に迫るもののクボタの厚いディフェンスの前にトライを奪えずそのままハーフタイム。ここで得点を奪えなかったトヨタ、耐えたクボタ。後半が注目された。
後半、クボタは2人少ないまま迎えた。トヨタは3分、ハーフウェイ付近のペナルティから周囲の状況をよく見ていたFL⑦古川聖人がクイックスタートし、FL⑥フェツアニラウタイミへ繋ぎ、そのまま40mを独走しトライ。ゴールも決まって15-14と逆転に成功した。
クボタは14分、ペナルティを得てショットを選択、これをSO⑩フォーリーが決めて、15-17と再逆転。目が離せない。
17分、トヨタはクボタ陣右隅で得たペナルティから距離40mのゴールをSO⑩クロニエが見事に決め18-17とまたまた逆転した。
24分、クボタはゴール手前10m付近のスクラムから展開し最後はHO②マークスがこの日2本目のトライを挙げた。ゴールも成功し18-24と逆転。
勢いに乗ったクボタは30分にも45mのペナルティゴールをWTB⑭ゲラード・ファンデンヒーファーが狙うがこれは失敗。残り時間少ない中、突き放したいクボタはゴール手前5mのラインアウトから何度も攻めるがトライを奪うことができない。40分、相手22mライン付近でペナルティを得てWTB⑭グラード・ファンデンヒーファーがゴールを狙うが不成功。これが決まれば勝利はほぼ確実だっただけに惜しまれる。チャンスを逃すと流れが変わる。
ロスタイムに入った42分。試合終了を告げるホーンも鳴り、これでノーサイドかと思われたがトヨタは自陣22m付近のラックから出たボールをCTB⑫マレ・サウ→CTB⑬ロブ・トンプソン→後半15分にFB⑮ウィリー・ルルーに替わった㉓チャーリー・ローレンスと繋ぎ、最後はWTB⑭高橋汰地が右隅に押さえた。ゴールが決まれば逆転の場面、狙うはSO⑩クロニエ。会場全体が静まりかえる中、キックされたボールは弧を描いてクロスバーを越えた。
劇的なシーソーゲームを制したトヨタがレッドカンファレンス2位を決め来週から始まるプレーオフトーナメントに挑む。マンオブザマッチには大逆転トライを決めたトヨタWTB⑭高橋汰地が選ばれた。
記者会見レポート
クボタスピアーズ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ(HC)
先ずはトヨタがよくやったと言うことを称えたい。最後にああいう形で勝てるのは素晴らしい。だが我々も掲げているProud Billboard「誇りの広告塔」になるという部分はしっかり出来た。イエローが2枚出た状況でもコントロール出来たのがよかったと思う。結果負けてはしまったのは残念だがこれを学びにしてノックアウトステージを楽しみに戦って行きたい。
立川理道 キャプテン(CP)
このシーズン初の長い遠征で遠い場所での試合だったが、たくさんのファンに来ていただきすごく素晴らしい雰囲気の中で試合が出来たと思う。試合の内容は点差を見ていただいた通りで、最後点差がああいう形になったのは残念だが、これからしっかり立て直すことが大事。この負けを生かしプレーオフまで少し時間が空くので修正し戦って行きたい。
Q:この敗戦をどの様に受け止めているか?
ルディケHC
タフな試合だったが、これで終わりでは無いし、シーズンもまだまだ続くのでこの試合をしっかり学びにつなげたいし、この試合で自信も付けられた。また我々も戻ってシーズンを良い形で終えたい。ラインアウトは準備してきたものを出せた。負けてしまったことは残念だがこれもラグビーだと思う。
Q:ペナルティが多かったがプレッシャーが掛かっていたのか?
立川CP
ペナルティの部分は受け入れて修正しなければいけない、ただレフリーのことを批判している訳では無いが、80分間を通して一貫性を持ったレフリングをして欲しい。
Q:最後のペナルティゴールを選択した理由は?
立川CP
どの判断も正解は無いと思うが、ラインアウトモールを2回チャレンジしてうまくいかなかったので、ゴールを狙って点差を開けることが一番のプランだと思っていた。もちろんモールで時間を使ってキックアウトと言うのも一つの選択肢だが、その選択に関して後悔はあまりして無い。しかしトライされたディフェンスに関しては修正ポイントがあると思っている。
マルコム・マークス選手
先ず今日は暑かった。ただ自分たちもしっかりやっていた。イエローカードが出た場面もこらえていたと思う。レフリーのコールも何点か自分たちのものにできなかったが、しっかりファイトしたと思う。85分の時点であのような形になったがこの試合もいい学びであった。よく出来たところや出来なかったことを修正しポジティブに捉えて成長して行きたい。
岡田一平選手
今日の試合は自分が出るタイミングでは13人と言う状況で、自分の心境としてはチャレンジグな試合になると思った。その中で自分の仕事は出来たと思うし、コントロールやテンポを上げると言う意識もしていた。それを実行出来たのは自分の成長だと思う。ただスクラムハーフとしては結果に拘って行きたいと思っているので、今日の結果は残念だ。しかしチームは誰一人下を向いたり、肩を落としている選手はいないし既に次のゲームを考えて、リーダー陣含めて次につなげようと話しているので頑張りたい。
Q:今日の敗戦をどの様に次に生かすべきだと思うか?
マークス選手
今までもこの様な経験はしているが気持ちのよいものではない。学ぶと言うことが一番大事だと思う。先ほども言ったようによかった部分をポジティブに捉えて更に上げていき、ミスやよく無かった部分を改善して成長していく。しっかり選手たちもファィトしてくれたので、そこもフォーカスしていき、次のノックアウトステージも戦って行きたい。
Q:厳しい状況で早い時間帯に投入されたが、ベンチやコーチから何か指示やアドバイスがあったか?
岡田選手
直接は無かった。
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
サイモン・クロン ヘッドコーチ(HC)
前半に関してはペナルティが重なり、また相手に自陣15mに入られペースをつかまれたシーンが多かった。特に前半の最後はなかなか得点につなげられなかったが、概ね前半に関してよい形に仕上がっていたと思う。しかし後半はゲームのテンポが遅くなってしまった。セットピースでのエラーにつながりアタックがスピードをつかみきれなかった点があった。しかし試合前から選手たちにも言っていたが84分、85分まで、最後まで戦いきること、フェーズを重ねて我慢することを繰り返し伝えていたので、そこが勝利と言う形につながったと思う。
茂野海人 キャプテン(CP)
本日、勝利出来たことをうれしく思う。クボタの強いフォワード、うまいバックスに流れを持っていかれそうになっていたが、自分たちとしてはやることは変わらなく、10秒毎に何をするか考え、チームとしてもプレッシャーを与えられた状況で、それを乗り越えた先には成長があると1週間を通して話していた。監督も言っていたが、一人ひとり責任を持って役割を果たしたことで勝利につながったと思う。更に今後成長出来る部分、改善する部分を修正しトーナメントに向けてやって行きたい。
Q:今日の試合で2位通過を決めたが次の試合への抱負は?
クロンHC
自分たちにとってこの7試合と言うのはチームとして成長するよいチャンスだと思っている。自分たちのプロセスは何なのか、そういった所から自信を付けてインサイドやアウトサイドのコンビネーションは一番何がよいのか、また確固たるチームカルチャーを築くといったところにも注視していた。トヨタには非常によいリーダーズが揃っているので、その中で一致団結するその集大成が今日84分まで戦いきるという形につながった。今後のノックアウトステージに関しては自分たちがやることに集中する自分たちのプロセス、自分たちの仕事、役割に集中し気を引き締めて行きたい。
茂野CP
クロンHCも言っていたが、目標としては日本一のチームになることだが、先のことばかりではなく今に集中することが大事で、先ずは目の前のゲームに集中して、一人一人の役割・責任を果たしていくことが勝利につながるので、そこのプロセスを大事にして行きたい。
Q:プロセスを大事にするとの事だが、プレーオフに入る前の準備としてどの程度満足しているか?
クロンHC
トヨタにはハードワークをし続けるプレイヤーが揃っている。7節を通じてよりよいプレイヤーになる、その為に本当に全員ハードワークをしてくれていると思っている。メンタル面においてもいかに自分たちに苦難な状況をマネージしていくか、そういったところも今日の試合を通じて学べた点が多かった。例えば後半にゲームのペースを落とされた時でも、それに負けずにどのようにマネージしていくか考えていたと思う。準備に関してはこの7節において非常にラグビーの経験が増えて糧になったと思っている。先ほども言ったが多くのリーダーズが揃っているので、今日プレイした選手もフィールドで学ぶことが多かったと思う。そのようなことを糧にして今後も84分戦う自分たちのプロセスをやりきる事に徹する。
彦坂圭克選手
最後までもつれる試合だったが勝ちきる事が出来てほっとしている。
高橋汰地選手
接点が激しくなる展開を予想していたが、皆が最後の最後まで体を張って諦めずにプレイしたことが勝ちにつながった、彦坂選手も言っている通り今はほっとしているのが一番です。
Q:スクラムに関して後半クボタに対応されていたことと、相手のブレイクダウンの感想は?
彦坂選手
スクラムに関して前半は低く組めていたが、後半は疲れも出てクボタに合わせる形で高くなってしまい押されることがあった。全体的にはよいスクラムが組めていた。ブレイクダウンは2人目、3人前の寄りが遅かったので修正していかなければいけない。
Q:最後劇的なサヨナラトライを決めたが、どのような気持ちだったのか?どのようなイメージを持っていたのか?
高橋選手
昨日の神戸製鋼対NTTドコモの試合を思い出していて、クボタの選手がゴールキックを外した瞬間に劇的なことがあるかもと思っていた。ボールが回って来てチャンスが有れば行くぞとイメージしていた。
Q:この7戦を振り返ってどのように自分を評価するか?
高橋選手
1節から出場の機会をもらえて、自分的には上手く行っている部分もたくさんあると感じているが、まだまだ7節を終わった後でも課題はたくさん見つかるので、それをトーナメントが始まるまで1個1個潰し、トーナメントで活躍したい。
Q:どの様な点が1番の課題か?
高橋選手
先ずウイングとしてはトライを取りきるというのが1番の仕事なので、今日もウィリー・ルルーからのキックパスをインゴールでノックオンしてしまったり、大外で相手にタックルされノックオンしてしまったりがあったので、もっとボールを大事にするというメンタルを持たなければいけないのと、自分で裏に蹴って持っていくとか細かいスキルを磨いて行きたい。
Q:今シーズンの成長や手応えを感じている部分はあるか?
高橋選手
昨年から比べるとターンオーバーされるシーンが減ったと思う。昨シーズンは大外で相手にボールを渡してしまうシチュエーションが多かったが、今年は練習中からボディコントロールを意識している。それが改善されてきていると思う。
Q:トーナメントが終われば代表活動が始まるがそれに対する思いは?
高橋選手
代表に入りたいというのはラグビープレイヤーなら誰しも思っている。チャンスをもらえればしっかり自分らしさを前面に出してアピールして行きたい。
Q:代表に選ばれたらどのようなことをアピールしていきたいか?
高橋選手
まずはスピード、1対1で倒れない粘り強さとハイボールキャッチ。細かいスキルのところを見せて行きたい。
Q:自身のパフォーマンスと今年スクラムに関してチームとして成長していると思うが、そのあたりを聞かせて欲しい。
彦坂選手
今シーズンはしっかり8人で結束力高く組めていると思う。自分たちも手応えを感じている。自分自身はセットプレイが安定して来ていると思う。ボールキャリーを増やしたり、コンタクトゾーンでノミネートできるタックルを増やしていきたい。
Q:スクラムは何か変えたのか?
彦坂選手
特に変えてないが精度が上がっていると思う。
Q:マルコム・マークスとマッチアップして世界最高峰のフッカーと自分との違いは感じたか?
彦坂選手
スクラムの所は接点が多かったが、基本的に自分たちのルーティンをしっかりやりあまり意識しないように思っていたが、正直実はめちゃくちゃ意識していた。コンタクトの強さ、ボールに絡む点は見習って行きたい。
(文責:大阪府協会 中村弘人)
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