トップリーグ 入替戦
近鉄 VS. 九州電力
2017年1月28日(土) 13:00キックオフ グラウンド:東大阪市花園ラグビー場 | ||||
近鉄 | 九州電力 | |||
47 | FULL TIME | 0 | ||
26 | 前半 | 0 | ||
21 | 後半 | 0 | ||
詳細 (TL公式) |
マッチレポート
2019年ワールドカップで2年間の改修工事に入る花園。改修前の最後の試合は伝統チーム同士となり、熱心なファン約3000人が集った。2005年から3シーズンの下位リーグを経験、下位リーグ落ちはなんとしても回避したい近鉄ライナーズと5シーズンのトップリーグ経験があるものの2014年からトップキュウシュウに甘んじ捲土重来を期す九州電力キューデンヴォルテクス。これまでのトップリーグでの4回の対戦はいずれも近鉄が勝利しているが独特の雰囲気を醸し出す入れ替え戦だけに勝敗の行方が注目された。
快晴微風の中、九電FB15番加藤誠央のキックオフで試合の幕が開いた。開始10分は九電が好ディフェンスで善戦。一方の近鉄は9、11分と微妙な場面でのTMOでトライが認められなかった。しかしこのころから近鉄の強力なスクラムと確実なラインアウトが威力を発揮し始める。迎えた13分、得たペナルティーで優位に立つスクラムを選択。その後G前15m中央のラックを形成し右へ展開。最後はやはりこの人、FB15番アンドレ・テイラーが右中間に押さえて先制した。
スクラム、ラインアウトでの優位に立つ近鉄が24分、SH9番金哲元がスクラムから、32分、フッカー2番永下安武がモールから、39分、右フランカー7番、辻直幸がラックからトライを奪い、前半は26-0と近鉄がリードして終えた。お互いに好ディフェンスとミスが入り交じった前半戦であった。
後半に入って約10分間、近鉄のミスもあったが前半同様、九電が好ディフェンスで対応した。しかし12分、スクラムで近鉄の強力な押しに九電がたまらずコラプシングを犯すと、PKからのタッチを選択。LOからNo8ラトゥイラ レプハが右中間に押さえた。この試合を象徴するような近鉄の攻撃だった。
19分、FB15番テイラーがこの日2本目の、27分には右WTB14番森田尚希のトライを奪い47-0と大きくリードを奪った。最後まで必死に試合に挑む九電は終盤、近鉄ゴール前に迫る場面も見せたがミスもあり、最後まで近鉄ゴールを割ることができずノーサイドとなった。
近鉄がスクラム、ラインアウトといったセットプレーでの強み、ブレイクダウンでの厳しい仕掛けで九電を圧倒した試合であったが、九電の真摯な試合マナーがさわやかな印象を残した。近鉄は今シーズン多かった競り負けの克服と「トライを取る」、九電はフィジカルの強化とブレイクダウンへの対応と課題は残った。両チームの来期にの活躍に期待したい。
記者会見ダイジェスト
九州電力キューデンヴォルテクス
瓜生丈治監督
チームや協会をはじめとする関係者、それから今日駆けつけてくれたファンの皆さんにまずお礼を申し上げたい。今日の試合に関しては、トップチャレンジシリーズの三戦の手応え、特に最終の日野自動車戦で得た課題を踏まえて修正して臨んだが、近鉄のセットプレイの強さを前にして、我々としてはボールを継続することが出来ずに敗れてしまった。ただ、選手達はひた向きに試合に挑戦して九電らしさを出してくれたと思う。来季もこの経験を活かしてトップリーグ再昇格を目標に頑張っていきたい。
中靏憲章キャプテン
九電のファンの皆さんにまずお礼を言いたい。また、チームを支えてくれたメンバー以外のスタッフに向けての感謝の思いを込めて今日の試合に臨んだ。我々としてはボールのポゼッションを上げたかったのだが、ブレイクダウンで近鉄のプレッシャーを受けたのが敗戦の原因となったように思う。一年間頑張ってきたがやり残したことが多く、それが0-47という結果となった。
――近鉄の強いセットプレイへの対策は?
瓜生監督
セットプレイでのリスタートとならないよう、できるだけミスを少なくしようとした。また、スクラムでもボール出しのタイミングをいろいろ変えてみるなどの工夫をした。ただ、結果としては想定していたよりスクラムの回数は増えてしまった。
――外国人選手が居ないという制約について?
瓜生監督
フィジカルな強さが大事なので、一年間を通じて体が大きくなるよう皆努力してきた。また、厳しいプレッシャーの下でも素早く適切な判断が出来るようにスキルアップに努めて行くことが必要だ。
――近鉄相手に通じると思ったところは?
中靏キャプテン
大外へまわした時のスピードは良かったように思う。大事なのはそのような状況を造り出して行くことだ。
近鉄ライナーズ
坪井章監督
最終戦になっても多くのファンに駆けつけてもらった、関係の皆さんにまず感謝を申し上げたい。試合の相手九州電力は、チームとしてのエネルギーもあり、一人一人がしっかりとファイトしてくる。我々としては、相手をリスペクトしつつもトップリーガーとしてのプライドを持って試合に臨んだ。結果として、スクラムをはじめとしてセットプレイの強さを見せることができた。最後になって近鉄らしさが出せたものと思う。監督として一言述べておきたいのは、キャプテンの豊田が率先して辛い練習にも取り組み、彼の力で近鉄の強さが出来上がって来たということだ。
豊田大樹キャプテン
シーズンでいい結果が出せずに入替戦にまわることとなってしまった。しかし、会社の厚いサポート、ファンの皆さんの熱心な応援は変わらない。幸せなチームにいると思う。入替戦というのは難しい。相手も必死で向かってくるし、それを受けてしまわないようにして攻め続けなければいけない。皆今日に向けていい準備をしてくれたと思う。振り返ると苦しいシーズンだったが、皆で一つ一つ積み上げるようにしてきた、来季に向かってもこのような努力を重ねていきたい。
――前半立ち上がり2度続いてTMOでトライが認められない展開となったが?
豊田キャプテン
準備の過程で立ち上がりはうまく行かないことが多いと言い続けてきたので、焦るということはなかった。
坪井監督
キャプテンのいう通りで2週間の準備の過程を良く知っているので安心して見ていられた。
――2週間の準備とは?
坪井監督
まず、キックでのエリアマネジメントをしっかりする、相手陣に入ってからはセットプレイに集中して、フィジカルに強く相手に当たっていくよう心掛けた。
豊田キャプテン
九州電力はディフェンスが強いのでひるまずにしっかりとアタックするようにした。
――改修前の最後の試合だったが?
坪井監督
いいラグビーを見てもらいたいという思いはずっと強かったし、選手もそのために準備をして来た。改修の前にコアなファンに近鉄の熱いラグビーを見てもらえたと思っている。
――来季に向けては?
坪井監督
今季は、スクラムの強化を一つのポイントとして来たが、その結果、リーグ一の強さを誇るヤマハにも押し勝つことができるようになった。また、けが人が多かったが、このことは反面、チーム全体としての底上げにもつながった。しかし、シーズンを通じて7点差以内の負けが多くトライ数も少ない。したがって来季に向けては、いかにしてトライを取り切るかということにフォーカスして行きたい。
豊田キャプテン
FW一人一人のスキルアップ、BKとの連携など必要なことは全てにわたってその強化に取り組んでいきたい。
(記事:村島博、丸井康充)