前田隆介のトップリーグ2016-2017開幕直前プレビュー

8月26日に開幕するジャパンラグビートップリーグ2016-2017。近鉄ライナーズ前監督の前田隆介さんにトップリーグの展望をお聞きしました。

◆王者・パナソニックに死角なし?!

昨シーズン、ファイナルで東芝との激闘を制してチャンピオンとなったパナソニック。
強いチームには強い要素がありますが、パナソニックがチャンピオンである最大の要因は「適応力」です。ゲームの中で刻々と変わる状況に、選手が自ら対応していく。その適応する早さとレベルの高さが、他チームより抜きん出ています。

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さらに、今年も国内外から盤石な補強をし、勝ち方を知るヘッドコーチが引き続き指揮をとります。
注目は筑波大学在学中の山沢拓也。チームとしても新しい試みで、同ポジションにベリック・バーンズがいるなか、彼を使うのか。使い続けることができるのか。ロビー・ディーンズ監督がどのような采配をするのか注目です。
他にも見てみたい選手ばかり。日本代表の福岡堅樹(筑波大卒)、藤田慶和(早稲田大卒)も加入して、山田、笹倉、北川などとポジション争いをします。「誰を使ってくるのだろう」と、毎試合メンバー発表が楽しみになるはずです。

ただ、パナソニックは他のどのチームよりも多くの選手を、日本代表やサンウルブズを始めとしたスーパーラグビーに送り込んでいます。チーム作りにどういった影響を及ぼしているのかも、気になるところです。

近年のトップリーグは非常にレベルが高く、各チームの差は僅か。ちょっとした流れをつかめるかどうかで、チャンピオンチームが入れ替わるシーズンになるはずです。

◆新外国人選手の目玉は?

今シーズンも各チームにきらびやかな外国人選手が加入します。その中で一人を上げろと言われると、サントリーに復帰するジョージ・スミスです。と言うと「わかってる」とお叱りを受けますね(笑)
そのジョージ・スミスと同じくらい注目しているのが、クボタのヤコ・クリエルです。今年はスーパーラグビーでライオンズ躍進の立役者として大活躍。世界的に見ればサイズはそこまで大きくない(184cm/100kg)のですが、ボールに対するスキルやこだわりは特筆すべきものがあります。
昨年近鉄にいたスピースのようなインパクトを、チームに与えてくれるのではないでしょうか。

◆関西協会管内のチームを分析

●ヤマハ発動機
五郎丸が抜けた穴をどれだけ埋められるか。驚異的なセットピースの強さと、精度の高いキックで着実に得点を重ねるチームです。新外国人がキッカーをつとめるのか、日本人が蹴るのかはわかりませんが、チャンピオンになるためには、キッカーは最重要事項でしょう。ただハーフ団はSH矢富、SO大田尾と変化はないはず。大きく崩すことはないでしょう。

●神戸製鋼
山下楽平の復帰がポイント。新ヘッドコーチに元オーストラリア代表アタッキングコーチのジム・マッケイ氏が就任し、攻撃を整理してくるでしょう。昨年まではディフェンスにフォーカスすることが多い印象でしたが、新体制でどういったストラクチャのアタックを見せてくれるのか。その中で山下楽平のステップやアタックが重要になってくるでしょう。あと山中がCTBで活路を開きつつあることも、重要でしょう。

●トヨタ自動車
チーターズと7月に対戦したことからもわかるように、ワールドクラスのチーム運営を行っているさすが世界のTOYOTAですね。チーターズと提携して、若手を派遣し修行させるなど、派手ではありませんが我が道を行く強化を続けています。今シーズンも核は、北川、谷口に代表される大きくて強いFWでしょうか。激しさを売りにした、ドカンドカンといったラグビーを見せて欲しいです。

●近鉄
古巣ということで身びいきもありますが、ベテランと若手をうまく融合させて力を積み上げているチームです。勝負どころで勝ち切れないシーンが目立ち、数年低迷しましたが昨シーズンはようやく上位グループの7位に。過去最高の4位以上に向けて、坪井新監督には期待しています。
新外国人もスーパーラグビー・レッズから来た、オーストラリア代表のキャップを持つファインガとサウティア。さらに若くて伸び盛りのFW2人と考えたリクルートです。

●豊田自動織機
昨シーズン9位。過去最高成績を残し、ルーキーの山下一がサンウルブズに参加。そのまま日本代表にまで上りつめました。さらに坂井克行を中心にしたセブンズ日本代表が、オリンピックで活躍しているように個々の力は十分にあります。それがどうチームとして機能するのかが、ポイントになるでしょう。

●Honda
昨シーズンは初めてトップリーグに残留しました。セブンズ日本代表のレメキなど、もともとタレントぞろいのチームです。今年は元スプリングボクスのステフマンなど旺盛な補強。中でも元神戸製鋼のマパカイトロを獲得したのは、確実なチーム力アップに繋がるはずです。

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◆トップリーグ開幕節他、序盤の注目カード

トップリーグ16チームの力差が小さくなっている昨今、どの試合もエキサイティングで熱くなれます。
まず、オープンニングゲームである8月26日(金)、ヤンマースタジアムのサントリー対近鉄です。昨年はトップリーグ発足後初めて近鉄がサントリーに勝利しました。この前の勝利が2000年1月で、私がまだ現役の頃。その後サントリーはチーム改革をすすめ、更に強くなったことを覚えています。
今季のサントリーも新体制。ジョージ・スミスの復帰もあり、また強くなるのではないでしょうか。
どちらのチームも今季の大一番として、挑むはず。いきなりのビッグマッチに期待せずにいられません。

関西のオープニングと同じく、関東・秩父宮のオープニングゲームのパナソニック対ヤマハ発動機も注目です。
パナソニックは、WTBの顔ぶれをチェック。代表クラスの選手がひしめき合うだけに、どの選手でどんなメンバーで挑むのか。そして、ヤマハはまずキッカーに注目です。セットピースでの優劣から、点の取り方まで。全てに目が離せません。

27日(土)の神戸ユニバーでの神戸製鋼対NTTコミュニケーションズも、今シーズンを占う重要な試合です。
神戸製鋼の新しい攻撃のストラクチャーがどんなものなのか。NTTコムは、キャプテンの金正奎不在でどんなチーム作りをしてくるのか。ヤンチース、マフィらがどこまで初戦に間に合うのか。など両チームのメンバー発表から見逃せません。

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2節以降でポイントになりそうなのは、第4節のヤマハスタジアムでしょう。ホーム初戦となるヤマハがどんな状態で東芝と対戦するのか。もちろん、3戦3勝出迎えたいはず。同時に、ここに至る両チームの戦い方も気になってくるところですね。

関西のチームではありませんが、第1節の愛知・パロマ瑞穂、第2節の山口・維新公園で試合をする宗像サニックスにも注目しています。まるでセブンズのような独特のチームスタイルでトップリーグに旋風を巻き起こしたサニックス。壁にぶつかって、トップキュウシュウと行ったり来たりといった状況ですが、今シーズンからコーチングスタッフにカルロス・スペンサーが加入しました。独自性を保ちつつ、トップリーグと渡り合えるチームをどう作っていくのか。興味津々です。

他にも、第4節の万博で関西ファンに新チームを披露することになるクボタ。フラン・ルディケ新HCの下、大型補強をしたある意味今シーズン最も注目されるチームです。ヤコ・クリエル他、どの選手がどんな活躍をしてくれるのか。
残念ながら、序盤第4節までは関西協会管内での試合がないNECですが、日本代表やサンウルブズを多数抱えるチーム。昨シーズンは15位ですが、少しずつ歯車がかみ合わなかった結果。序盤で波に乗れば、一気に上位進出もあります。

実力伯仲のトップリーグにおいて、序盤でいかに流れをつかむかは、シーズンを通した戦いに影響します。それぞれのチームが、どんなラグビーをするのか。5カ月間に渡る戦いがいよいよはじまります。

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前田隆介さん プロフィール

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天理高校から早稲田大学を経て、1997年近鉄ラグビー部入部。現役引退後は社業に専念しながら早稲田大学コーチを経て近鉄ライナーズのコーチ、監督を歴任。2015年度シーズンで退団し、現在は社業に専念。合間に関西大学を週末コーチとしてサポートしている。小さい体ながら強気で切れのあるアタックで近鉄ラグビーの象徴的存在だった。