1月23日(土) 順位決定トーナメント サントリー 対 豊田自動織機
2016年1月23日(土) 14:05キックオフ グラウンド:東大阪市花園ラグビー場 | ||||
レフリー:塩崎公寿 (日本協会A1) アシスタントレフリー:吉浦忠孝 / 立川誠道 / 西田雄吉 |
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サントリー サンゴリアス |
豊田自動織機 シャトルズ |
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78 | FULL TIME | 14 | ||
38 | 前半 | 0 | ||
40 | 後半 | 14 | ||
詳細(TL公式) |
マッチサマリー
昨年9月のプレシーズンリーグで開幕したジャパンラグビートップリーグ2015-16もいよいよ最終節。順位決定トーナメント負けなしのサントリーサンゴリアスと豊田自動織機シャトルズによる9位決定の一戦。前節サントリーはホンダ、豊田自動織機はクボタをそれぞれ破ってトーナメント戦2連勝。下位トーナメントとは言え、何とか両チームとも9位でシーズンを終えたいところ。今季初の両チームの対戦は、底冷えの東大阪市花園ラグビー場でトップリーグ閉幕を惜しむ5000人近い観衆の見守る中、豊田自動織機SOマーク・ジェラードのキックオフで幕を開けた。
ゲームは開始直後から一方的なサントリーペース。サントリーが豊田自動織機陣深く攻め込み、豊田自動織機が何とかキャリーバックで凌いだ直後の前半4分、ゴール直前の中央ラックから、サントリーSHフーリー・デュプレアがそのまま持ち出して中央にトライ。CTB小野晃征のGも決まりあっさり7-0と先制した。RWC2015南アフリカ代表の司令塔、SHデュプレアは13分に退くが、その後もサントリーはFW、BK一体となった攻撃の手を緩めずトライを重ねる。一方の豊田自動織機もSOジェラードの巧みなキックや強力CTB陣のラインブレイクで時折サントリーゴールに迫るが、反則やハンドリングエラーで得点には結びつかない。サントリーは前半だけで6T4Gと豊田自動織機を全く寄せつけず、38-0で折り返す。
後半に入ってもサントリーは全く手を緩めず。高速BK陣、特に右WTB塚本健太がこの日3T、左WTB江見翔太が2Tとトライを重ねた。一方の豊田自動織機も何とか6分、36分にFB長谷川真人、SH梅田紘一がトライを返し意地を見せた。逆にサントリーは終了間際、RWC2015日本代表のFLツイ ヘンドリック、右PR畠山健介がダメ押しのトライを奪い、最終的には78-14の大差で9位を確保した。
最もゲームが湧いたのは後半10分、今季限りの引退を表明した元日本代表、豊田自動織機のCTB大西将太郎が登場した場面。全盛期さながらの身体を張ったタックルは、再三サントリー攻撃陣に突き刺さり攻撃を寸断。ノーサイドまでピッチに立ち続けたその雄姿に、観客の惜しみない拍手が送られた。
過去3回、TLチャンピオンを勝ちとっているサントリーは大勝したものの過去最低の9位。若手への切替えを進めて、来季以降の捲土重来を期す。一方の豊田自動織機は最終戦で強豪サントリーに大敗したが、TL昇格後最高位の10位となった。
MOMは1T、8Gを挙げたサントリーCTB小野晃征に贈られた。
試合終了後、この試合を最後に現役を退く豊田自動織機CTB大西将太郎選手の引退セレモニーが行われた。家族や恩師からの花束贈呈、本人の挨拶などが行われ、会場を訪れた観衆から最後まで温かい拍手が送られた。また同様に現役を退くRWC2015南アフリカ代表のサントリーSHフーリー・デュプレアと共に両チームの選手による胴上げが行われ、偉大なレジェンド2人がTLのピッチを後にした。
(記事:石川 悟、丸井康充)
会見ダイジェスト
豊田自動織機シャトルズ 丹生雅也ヘッドコーチ
最終戦でサントリーという素晴らしいチームとのゲーム。速いテンポのアタックを止めるべくディフェンス、特にブレイクダウンで激しくプレッシャーをかけて行こうと挑んだ。個々の力ではサントリーがうまく、クイックテンポを止めることができずに相手のリズムに巻き込まれてしまった。今シーズンを振り返ってみれば、松岡キャプテンを始め選手たち全員が昨シーズンを反省して『入替戦回避、トップ8へのチャレンジ』を目標に掲げて春から厳しい練習を重ねてきた。選手たちがチーム・ファーストで取り組んだシーズンで、豊田自動織機として初めて10位という結果を達成できた。この場を借りて、選手たちのがんばりとバックアップのスタッフに感謝を述べたい。今日は大差がついてしまい、まだまだトップ8までには厳しい道だと痛感させられたゲームだった。まずはゆっくり休み、また来季に向けて何が必要かという課題を見つけて臨んでいきたい。多くのファンの皆さんにも応援いただき、本当に感謝している。
松岡毅キャプテン
昨シーズンは入替戦でぎりぎりTLに残れ、二度と同じ思いはしたくないと春から死に物狂いで練習してきた。今年良いチームになって、10位という結果には満足している。シーズンを重ねるにつれて負けからいろいろ学ぶことができ、そのたびに良くなってどんどん改善できていたが、今日はまた学ぶことの多い試合になってしまった。本当に悔しいがこの負けをしっかりと胸に刻んで、また来シーズンこのレベルにチャレンジするために、一から頑張りたい。
Q.大西選手はチームにとても大きな存在だったかと思うが、その選手の引退はチームにどんな影響があるのか?
丹生ヘッドコーチ
感じていることは皆さんと同じだと思う。大西選手に加わってもらってからTLに定着することができるチームになれた。彼がTLの他チームや日本代表で経験してきたことをチームに取り入れてくれたと思う。今シーズンに限ればプレイングコーチという難しい立場で、本人は本当に苦しんだと思う。けれども彼が頑張ってくれた結果がこの順位にあると思う。
松岡キャプテン
ラグビーに対する情熱が素晴らしく、真のプロ・ラグビー選手の見本だと思う。3年間一緒にプレイさせていただき、今年はキャプテンとプレイングコーチという関係でたくさん助けてもらったにもかかわらず、最後に良い試合で送り出せなかったことが残念。
サントリーサンゴリアス アンディ・フレンドヘッドコーチ
選手たちが素晴らしいゲームをしてくれた。12T対2Tという結果で、選手たちは本当にプライドを持って戦ってくれた。最終的に自分たちが望んでいる順位ではなかったが、シーズンを終えるゲームとしては良いゲームだった。シーズン全般としてはプレシーズンマッチで若い選手が大活躍。ファイナルでは敗れたが素晴らしい結果を残してくれた。リーグ戦ではチームとして一つのチームになり切れず、9位というとても残念な結果だったのも現実である。もっともっと成長していかなければならない。だがここ3試合、特に今日の試合はサントリーらしさが出ていた。キャプテン真壁選手がしっかりとチームをリードしてくれていた。
真壁伸弥キャプテン
サントリーとしては非常に波のあったシーズンだったが、トーナメントに入ってから、特に今日のゲームは次につながる内容だった。しっかりと来季に向けて準備して行きたい。
Q.残念ながら下位トーナメントということになったが、チームとしてどのような意識で最後の3試合に臨んだか?
真壁キャプテン
サントリーのラグビーとはどのようなものか、自分たちがどんなラグビーをしたいのか、アタッキングラグビーをやり抜こうというプライドを持ち、それをモチベーションに臨んだ。
Q.シーズン・ファイナルにサントリーがいないという結果だったが、来年に向けてチームとして取り組むべきことは?
真壁キャプテン
もっとボールを大切にするなど、ひとり一人が基本的なところを底上げしないと難しいと思う。大切な場面でのイージーミスなどが結果として響いてしまったので、ひとり一人の意識を変えることが重要である。ハードワークするということなどにきちんと取り組みたい。
Q.SRなどでキャプテンがチームを離れることになるが?
真壁キャプテン
残るリーダー陣などときちんとディスカッションし、どういう風にチームを作っていくかなどは今から準備して始めていく。
豊田自動織機シャトルズ 大西将太郎選手
Q.引退試合を終えられてどのような心境か?
去年までは毎試合のように出場していたが、今年は全然出ていなくて正直、試合前までは不安しかなかった。ただグラウンドに入れば身体が覚えているもので、いつもどおりタックルに行くしかないと思った。グラウンドの上では無心で、自分のやるべき仕事をひたすらやり続けることしか頭にはなかった。
Q.およそ30分の出場となりタックル、キックもあったがどのような思いだったか?
時間よ止まれ、このままずっとここでプレイしていたい気持ちだった。いつもどおり来ていただいているファン、ラグビーを愛している方々に何か伝わるようなプレイができればと思っていた。ただ最後は本当に笛が鳴ってほしくはなかった。
Q.最後はこみ上げるものがあったのか?
今日は絶対に泣かないと自分で決めて来たが、ホテルからこの花園ラグビー場までの道、生駒山を見ながらのいつもどおりの道、それを見た時にジーンときてしまった。試合に入るときはいつも通りだったが終わった瞬間、織機とサントリーの選手たちが集まってきてくれた時には涙が止まらなかった。
Q.ラグビー人生を振り返って一番印象に残っているシーンは?
高校時代の決勝はあの負けがあったからこそ、今までこれほど長く日本一を目指し続けてこられたと思う。あとはワールドカップ、2007年の大会の最後にあの時点で連敗を止めることができたことは本当に自分のハイライトだった。
Q.RWC2015でジャパンが南アに勝ったゲームの解説で「あぁこれで僕のシーンが流れなくなった」というコメントが印象的だったが?
そのようにして歴史は塗り替えられていくべきで、正直とても嬉しかった。あの場で解説できていたことを箕内さんと一緒に大喜びしていた。皆がこれから先も後退することなく、日本ラグビー界の歴史をどんどん良い方向に塗り替えていくことが大切である。2019年に向けて止まっているわけにはいかない。日本のラグビーを文化にすることを進めていきたい。
Q.今後のビジョンは?
本当に今は白紙です。したいことはいっぱいあるがすべてラグビーに関わること、ラグビーを盛り上げる場所に行くか指導者か。指導者の面白さも今年一年経験できたので、どちらに進もうか非常に迷っている。
Q.大西さんにとってのラグビーとは?
自分を作ってくれた全てです。死ぬまでできると思っていたし、していたかった。本当にラグビーが大好きなので、これからもラグビーに対する愛は続いていく。
Q.引退を決めた時期、きっかけは?
自分は社員選手でなくプロとして始めて、試合に出られなかった今年、試合に出られなくなればプロとして身を引くべきだと考えた。また最終戦が花園に決まった時点で、自分が辞める時だと決めた。これまでケガがなかったのに、今年はケガばかりで何度も諦めようと思った。けどもう一度グラウンドに立ちたいという思いでやってきて、今日はラグビーの神様のおかげで出場することができた。
Q.引退を決められるにあたりご家族とのご相談は?
家族からはここ2~3年ずっと早く辞めるように言われていた(笑)。30歳くらいで辞めようと思っていた自分が37歳まで続けることができ、非常にすっきりとした気分である。今夜からもう痛み止めを飲まなくて良いと思うと、とても気が楽になる。
Q.指導者としてはチームに残るのか?
会社からのオファーはまだないので何とも言えないが、チームに残るか母校(同志社大)に戻るのかそれらも選択肢である。自分を育ててくれた場所には恩返しをしていきたい。いつかは勝利監督インタビューなどでこの場に戻ってきたい(笑)。本当に有難うございました。
(報道陣からの拍手で見送り)
(記事:石川 悟、丸井康充)
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