医務委員会・安全対策委員会 トライアスロン競技から学ぶ熱中症対策 座談会

トライアスロン競技から学ぶ熱中症対策

平成 26 年 6 月 5 日 関西協会事務所において

出席者
外山幸正 関西ラグビー協会医務委員会委員長
佐光義昭 関西協会安全対策委員会委員長・大阪府立布施工科高校ラグビー部顧問
高折和男 関西協会医務委員会総務部会長
中村夫左央 関西協会医務委員会学術部会長
尾原義和 関西協会医務委員会学術部会部員・堺ラグビースクール前校長
新井達也 関西協会医務委員会総務部 大阪府協会医務委員長
笠次良爾 奈良教育大学 教育学部 保健体育講座教授 日本トライアスロン連合メディカル・アンチドーピング委員会副委員長

外山:
今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。昨年の夏は関西協会内では熱 中症事故がゼロでした。先日の 5 月中旬から下旬にかけては熱中症の救急搬送が非常にたくさんあったと報道されましたが、関西協会内でのラグビーの熱中症事故は今年も引き続
いてゼロをめざしたいと思っています。 今日は昨年に引き続き、トライアスロンの医務をしておられる笠次先生に今年もお越しいただきましたので、熱中症対策の話題をいただき、活発な意見交換をお願いしたいところです。

中村:
この日曜日(6月 1 日)午前中、私の所属するラグビースクールの練習があって、グラウンドで非常に暑く感じましたが、WBGTは実は 31°Cまで上がっていませんでした。ま だ暑熱馴化していないのだなあということを強く感じましたね。

尾原:
気温を測定して選手と指導者が客観的に現場の気象条件を把握できるようにするというのは重要ですね。
気温が30°C以上の真夏日は 5 月~6 月と 7 月~8 月ともにあるのですが、救急搬送されるのは、5 月~6 月のほうが多いそうですね。ですから今この時期から各チームに注意喚起をしたいので、協会さんこの記録の伝達をお願いしますね。(笑)

笠次:
日本トライアスロン連合の笠次です。今年もお呼びいただきましてありがとうございます。夏場のトライアスロンはラグビーと同様に熱中症との戦いですね。
ですから今年も5月末の今の時期に、すでに近畿ブロックの大学生選手達には熱中症対策講習会を済ませました。どう暑さを乗り切るか、どうしたら暑さの中パーフォーマンスを下げないようにするかは大きな関心事であり、暑さに負けず走り切るためにプラスになるイメージをシーズン前にお話してきました。本日はそのトライアスロン競技者対象の講習会での資料をお持ちしました。
トライアスロンのスタンダードディスタンス(51.5km)以上の距離の大会では普通の選手はフィニッ シュするまでに2時間以上かかるので、熱中症対策として、2011年からエイドステーション(給水所) に併設した救護所で、医療班が塩タブレット(塩タブ)を希望者に手渡しで配りはじめました。このよ うな熱中症対策への介入を始めてから、私が直接救護指揮を執る舞洲大会では熱中症で搬送された人数は明らかに少なくなりました。ただし「塩タブ」は一般化している訳ではなく、まだ私が関わる一部の大会で実施している状況です。塩タブではなく、昔からアイアンマンや宮古島、皆生などロングの大会では、塩分摂取用に塩の粉や岩塩、梅干しなどを置いていますね。
一方、スプリントディスタンス(25.7.5km)以下の距離の大会では遅い選手でも 2時間以内でフィニッシュするので、塩を置くことはしていません。

高折:
熱伝導は、涼しい時や、アイスバスに身体を浸ける時に働くメカニズムですね

笠次:
はい。一方、身体の中と外、両方からの熱刺激で温度受容器が環境温を感知した時や、実際に体温が上 昇した時には、視床下部の温度中枢・脳下垂体から指令が出ます。「皮膚への血流量を増加させろ!」、「皮 膚へ移行した血流は汗腺から汗として水分を排出しろ」と。 周囲環境温度が高くなる場合に、体熱は皮膚へと集中して、汗腺で発汗することがとても重要となって

います。汗が蒸発する際には、気化熱として体から熱が奪われるので、体温が下がる方向に働きます。(蒸 発性熱放散)
運動時には筋肉の活動にも血流が必要ですから、皮膚と筋肉の間で血液の取りあいが起きます。皮膚に 十分な血流が行かないと、発汗が低下することになりますから、身体のラジエターを十分に働かせるこ とが出来ないので、熱が逃げず、体温がどんどん上昇していくわけです。だから、血管の中に十分な血 液量が確保されている必要があるのです。

<★運動時の汗に注目>
5月くらいのシーズンはじめの大会救護に行きゴールする選手を見ていると、選手のウェアは粉を噴い しょねつじゅんか
たように真っ白になっていますが、あれ、全部汗の中の塩分ですね。つまり暑熱馴化ができていない時は、汗腺でのナトリウム(Na)再吸収能力がまだ良くないために、汗と一緒にたくさんの Na が出てしまうのですね。体が慣れてくると、汗腺での再吸収で Na が出なくなり、塩が噴きにくくなるようになります。体内の塩分の保持ができるようになるわけです。特にこの汗から外にでてしまった分の水分と塩分の補給が大切なのです。
運動時の発熱の多くは、筋肉活動から生まれます。その筋からの熱の多くは血流によって放熱しやすい皮膚に移動します。そして温度の高い皮膚から温度の低い空気中や水中へ、熱が伝導して逃げることになります。(非蒸発性熱放散)

高折:
脳の機能が低下するほどまでに、体温が上がるのが熱中症で、脳の循環・呼吸調節中枢の機能が低下するという悪循環がおきて、死亡に至るのでしたね。

笠次:
そうです。皮膚からの汗が十分に出ることがとても大切です。全く汗が出なくなる時は熱中症でも危険な状況です。ただそこまでひどい熱中症になる前に、スポーツ選手の熱中症予防に一番必要なのは、水分と塩分摂取 です。
夏の運動時に意識がもうろうとしてまさに倒れそうになっている時は、脱水か低血糖か、水分、塩分、糖分のどれかが足りないのです。現場で採血検査はできないから、そのなかの何が一番不足しているか はわからないので、まさにそのような現場では塩分・水分・糖分の全てを補うことに努めることになります。

外山:
水分をやたらたくさん飲む選手がいる一方で、いらないと言う大人もまだいます。水だけを飲み過ぎるとお腹がいっぱいになりますからね。 水分も多く取り過ぎるとお腹がチャポチャポになって走れないことはみんな経験していると思いますが、マラソンで走ったあとに体重を量ると、逆に増えていた経験が私もありました。

<★塩分補給>
笠次:
そうですね。これは昨年の対談でもお話させて戴いたことと重複することになりますが、実は水だけでなくて、同様に塩の補給がとても大切なのです。
水分だけだと血液中の Na濃度が上がらず、むしろ低下してしまい、めまいや吐き気、さらには意識障害まできたすというもので、水中毒といわれます。

佐光:
適当量の塩分補給が水分と共に必ず必要である。

中村:
個人でどのくらいの水分が損失しているか、概算で良いから、現場でわからないものですか?グラウン ドでその時点での、不足した水分量と塩分を正確に補給できるのが理想ですね。

笠次:
体重がどのくらい減ったかで、計算すると失われた水分量がおよそ計算できますね。グラウンドで体重を測定することが、一番良いでしょうが、それには制約があると思いますが、できる限り1回の練習でどのくらい体重が変化するか、体重測定するのが目安となります。

佐光:
2%から3%の体重低下は危険とされていますね。

中村:
体重60kgのおとなで1.2kg 。体重 20kgのこどもだと0.4kg。しかも実際には、裸での体重測定はできない。速乾性の軽いTシャツを着て、水をかける前に測定することが現実的でしょう。それでもウェアの吸った汗の水分もある。汗で濡れたウェアを着たままでの体重測定。しかもラグビーでは泥んこになることもありますから、これも体重測定時には影響するでしょうし、泥が体重計自身につきますし、スパイクをいちいち脱ぐことも面倒です。50gまで測定できる体重計でも、子どもでの測定は非現実的ですね。測定をすることさえもかなり困難ですね。文献的にこれまでの研究・調査はないものでしょうか?

笠次:
すいません、確かに小学生くらいの体重の軽い子どもにおける体重減少と熱中症発生との関係は具体的なものを示せません。体重減少が2%以内と数値を厳密に決めるのではなく、汗をかいてどの位体重が減るのかという感覚を持ってもらい、練習前後でトントン、あまり体重が変わらない程度の感覚でよいのではないでしょうか? それよりも間違いなく言えるのは、子どもの発汗機能は大人に比べて未熟なので、発汗による体温調節能力は大人よりも劣ります。つまり「子どもは熱しやすい」。一方、子どもの体表面積は、体重比に直すと大人よりも大きくなります。ですから、大人よりも広い放熱面積を持つので、「子どもは冷めやすい」と言うことにもなります。

尾原:
「子どもは熱しやすく冷めやすい」ですか。 練習途中では体重測定はできないので、とにかく、こまめにどんどん飲みなさいと言う。 堺ラグビースクールでは必ず強制飲水させています。必ず摂取時に監視しています。 そう言っても、いらないという選手も必ず出てきます。ドリンクが、感覚的に甘すぎたり、辛すぎたりするからです。

佐光:
一般的に、スポーツドリンクから塩分を補給する訳ですが、一番良いとされる OS-1 は普段に飲むと辛からい ですが、運動時でも「どんどん飲め」と言われるとどうですか?やはり辛すぎて飲めないですね。

笠次:
OS-1 は 500ml ボトルに塩分 1.4g、すなわち 100ml に塩分 0.28g含まれています。汗に含まれる食塩 量は 100ml あたり 0.175~0.3g といわれており、汗をかくスピードが速いほど塩分濃度は高いそうです。 ですから、まさに OS-1 はその範囲の高めの塩分を補給しているわけです。血液中の塩分濃度、点滴にす るのに用いられる生理食塩水は、塩分 0.9g / 100ml ですから、OS-1 はその約 1/3 の濃度です。それでも 塩辛いですよね。
ポカリスエットの塩分が 0.12g/ 100ml、アクエリアスが 0.08g/100ml、OS-1 よりさらにずっと薄い。そ のくらいの方が飲みやすいのですが、しかしそれだけだと少しナトリウムが足りない。

高折:
塩タブレット補充が良いというお話がありましたね。

笠次:
塩タブレットは 1 粒で塩化ナトリウム 0.45g です。
500ml ボトルで比べると、OS-1 の中に含まれる塩分は塩タブレット3粒分です。ポカリスエット 500 cc のボトルの塩分はタブレット 1 粒分入っている。あと 2 粒のタブレットを足すくらいで、乱暴ですが塩 分だけで言えば手製の OS-1 が作れますね。
塩の山から、大人の指 2 本でつまみ取る量が約 0.5g 程度といいますから、これが塩タブ 1 粒とだいたい 同じくらいなのですね。ふたつまみの塩をなめても良い。ただし子どもの一つまみはどのくらいか測っ たことはありません(笑)。

新井:
今の日本は、塩に対する抵抗感がありますよね。

笠次:
そう。今の日本人の食生活習慣では、高血圧になるからという理由で塩を摂取することに拒否感ができ てしまっていますね。ただし普段の摂りすぎは良くないにしても、長時間の運動時や汗をかく重労働時 には、汗で失った量の塩分くらいは補給しなければならない。

佐光:
高校生も、ちゃんと説明すれば理解できています。夏の練習では毎日塩を置いて、休憩になめることを 習慣づけていると、ちゃんと理解する生徒が出てきてくれます。塩がない時は、上級生が「今日は塩が ないぞ!用意はどうした?」と下級生に言っているシーンがあります。

中村:
そうですか。私のいるラグビースクールでは、昨年夏合宿に塩タブレットを用意しましたが、指導員が 「からい!高血圧になるわ」なんて言ってしまって、1 日 1 回きり、一粒とると、走っていない指導員に 嫌がられてしまいました。(笑)すると子供に食べさせないので、たくさん余りました。 頭でわかっていても、味覚を含めた感覚や食感が受け入れられることも大切ですね。

笠次:
疲れたときには甘いものや酸っぱいものが欲しい、汗をかいたときに塩辛いものを欲しいという、ヒト が本来持っている感覚も大切だと思います。

佐光:
塩が補給できておいしいと感じる物・・・ 昔の農家では、休憩に「麦茶に塩コンブ」という世界だったという話になるのですね。

笠次:
「梅干し」「都コンブ」も(笑)

<●糖分>
佐光:
糖分は味にも関係するとは思いますが、水分の吸収にある程度はあるほうが良いというお話でしたね。

笠次:
ええ。水分は胃ではなく腸管で吸収されるのですが、腸管での水分吸収にはある程度の糖分が有効です。

佐光:
一般には、水と塩分と糖分をスポーツドリンクで補給する訳ですが、かといって、大塚のポカリスエッ トは途中から子供たちも飲めなくなるんですね。お腹がいっぱいになるし、口の中がネバネバするとい うので嫌がる。理由は糖分が多いからですか?糖分は熱中症と言う観点からは補助的な役割ならもう少 し減らしても良いのではと思います。

笠次:
ポカリスエットは、糖分が 約 6g/100ml。コーヒーに入れる砂糖のスティックは 1 本が2gですから、3 本の砂糖を入れて飲んでいることになります。
500ml のペットボトル1本飲むと 30g、すなわち 15 本のスティックを入れて飲んでいることになるんで す。200ml のコップ 1 杯に 6 本。

一同:
えー 飲みたくないですね(笑)

笠次:
水分は胃の中では吸収されません。水分は腸管へ移って初めて吸収されるので、出来るだけ早く胃から 腸管へ送り出す必要があるわけですが、この胃内容が腸管へ排出される速度を GER といいます。この GER は胃内に 600ml 以上の量が入ると低下します。だから喉が渇いているからといって、スポーツドリ ンクの一気飲みをしても効率が悪いのです。また糖質濃度は 8%までであれば、GER には影響しないこ とが分かっています。ポカリスエットは糖質濃度が 6.7%ですので吸収にはプラスに働く範囲ですから、 その意味では多すぎるわけではないのです。

佐光:
でも、損失した分の塩を補給すべきだから、味の一定のドリンクを「たくさん飲め」と言うのは、でき ないこともあるのです。摂取すべき塩分量をとる前に、お腹がいっぱいになるという。

笠次:
血糖が先に上昇して、満腹中枢が満たされて飲めなくなるのですね。 エンポッカの「塩ジョイサポート」というのは、糖分が少なめで、飲みやすくて私は好んで使っています。 飲み易さというヒトの感覚も大切ですね。

佐光:
ドリンクに調和されたおいしい味を残すことは確かに大切なことですが、塩分と同様、糖分も人の感覚・ 味覚を信用することもきっと大切ですよ。昔の農家の休憩に「麦茶に塩コンブ」「梅干しに都コンブ」さ らに「飴ちゃん」という世界だった。

笠次:
そうですね。ドリンクばかりでなく、塩分は塩分、糖分は糖分で別々に摂るというのも、大切な方法で す。普段の食生活も大切ですね。

佐光:
しかも働くのも、朝早くと夕方に麦わら帽子かぶって・・・で、日照りの強い間は働いていなかった。 普段から、まさに経験的な生活の知恵というところですね。

<★15 分単位の水分補給にあう、メリハリの効いた練習メニューを>
佐光: 人の感覚と言う点では、練習で「しんどい」と言って、休んでばかりでは、体力もスキルも向上しない けれども、「しんどい」と感じると、自分から休む子は熱中症にならないですね。頑張る子が熱中症になっていると感じています。真面目な頑張る子に注意する必要があるのでは?

笠次:
トライアスロンでは、そもそも大学生以上の選手が多いですから、大学生の発生が多いのですが、個人 の記録挑戦ですから自己管理ができやすい。その点はラグビーと違うでしょうね。

新井:
ラグビーでは大学生はあまり熱中症になりませんね。高校生や中学生が多い。大学生は自分 で休むからでしょうか・・・。純粋な高校生中学生は、怖い先生の目を気にするので、頑張 るのでしょうね。(一同笑)
指導者は頑張る子に注意しないとダメということですね。

佐光:
指導者も、休憩のタイミングをしっかりと見極める必要がありますね。

笠次:
トライアスロンでは、エイドステーションの設置間隔は大会により異なりますが、暑い時期の大会では 10 分から 15 分の間に 1 度取れるように配備されています。

佐光:
およそ 15 分ごとの休憩が妥当ということですね。
ラグビーの指導者も練習のユニットを 10 分から 15 分単位で区切ること、計画性をもって練習に当たればよいのに。

新井:
昔の我々は「ダッシュもう一本!」「できるまでもう一本!」「パス落としたらもう一本!」延々とよく しましたね。

中村:
だらだらと「もう一本」を繰り返してしまうのは、事前の計画・目標設定ができていない練習であった りすることもあるわけです。

尾原:
試合のウォーターブレークも 10~15 分をひとつの単位で入れてもらえれば良いということですかね。
芝生のグラウンドでは、スポーツドリンクは塩分が芝をダメにするから持ち込み禁止というのは、熱中 症対策からすればどうも矛盾していますよね。人工芝でも糖分があるので、アリさんが来るからダメと 言われるそうです。

ウォーターブレークの時間も、ピッチの外にでて、しっかりドリンクなど塩分を補給するようにしても らわないと仕方がない。もしピッチの外でなら十分な時間をとって、日陰を利用することも良いかもし れません。

中村:
ミニの試合は7分から 10 分ハーフで、それでウォーターブレークをいれるのは少し意味が薄いかもしれ ませんよ。

笠次:
ウォーターブレークは必ずしも水分補給だけでなく、選手の状態を観察するのに重要だと思います。選 手の性格をしっかり把握し、頑張りすぎていないか、無理していないかを見極め、ブレーキをかけてあ げるのも、レフリーや指導者の役割ではないでしょうか? そう言う点では、熱中症の初期症状を把握しようと努め、症状が出たら早め早めに対応するという強い 姿勢が重要です。症状は、めまい、大量の発汗、筋肉のこむら返り、頭痛、吐き気、嘔吐、悪寒、虚脱 感、倦怠感、意識がもうろうとする、視線が定まらない、真っ直ぐ走れない、呼びかけに答えられない、 会話が成り立たないといったものですね。対応の方法は日体協が発行する熱中症予防ガイドブックに分 かりやすく示してありますが、とにかくスポーツ現場では、意識がなければ救急車、水分摂取が出来な ければ、これも速やかな医療機関受診ですね。そして効果的なクーリング、現場で使いやすいのは送風 でしょう。最近はキャンプ用の充電式扇風機が安価で購入可能です。これはうちわなんかよりも圧倒的 に効果的で、私はトライアスロン救護現場で愛用しています。さっき、「子どもは熱しやすく冷めやすい」と言いましたよね。子どもは水分補給ももちろん大事ですが、 それ以上に直射日光による輻射熱を避け、通気性・速乾性のウエアで、送風を使って効果的な熱放散を 現場で心がけることが大事なんだと思います。

外山:
そろそろ時間となりました。 熱中症予防という観点でまとめますと、身体の中に籠もった熱をいかに外へ放散するかが重要です。ヒ トの体は皮膚が最大のラジエターで、このラジエターを最大限に働かせるためには脱水になっていると 効果が低い、だから水分補給が重要と言うことです。しかし長時間運動では塩分も同時に補給しないと 水分が血管の中に残らないと言うことですね。またポカリスエットの中には多量の糖分があることも驚 きでした。塩分や糖分の摂取も、単にスポーツドリンクに頼るのではなく、梅干しや塩コンブや飴など のちょっとした食物からも摂取することも、現場で考えなおしても良いですね。その上で、効果的なク ーリングで熱放散を行うのが良いと言うことでしょう。
最後のお話にあった、15 分単位の水分補給にあう、メリハリの効いた練習メニューを考えていくことは、 指導者にとっても新しい視点ですね。
最後に 5 カ条をもう一度みて、熱中症防止に気をつけていただきたいものです。
本日はありがとうございました。

スポーツ活動中の熱中症呼ぼう5ヶ条
1.熱いとき、無理な運動は事故のもと
2.急な暑さに要注意
3.失われる水と塩分を取り戻そう
4.薄着スタイルでさわやかに
5.単調不良は事故のもと