ビジョンと準備、自分でボールをもらいに 〜RugbyWorker 第4回 近畿日本鉄道株式会社・坪井章〜

ビジョンと準備、自分でボールをもらいに

今回は近畿日本鉄道株式会社の坪井章さん(37才)。現役時代は魂のこもったタックルでチームをけん引するフランカーとして活躍。現在近鉄ライナーズのチーム広報としてラグビー部の運営に携わっておられます。 ラグビーに仕事として携わり続ける今に迫りました。

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現在の仕事内容

−−現在のお仕事を教えてください。
坪井 近鉄でラグビー部の広報をしています。マスコミ対応やプレスリリース、社内でのPR媒体の作成やホームページの管理などをしています。

−−大変多岐に渡った仕事のように思えます。
坪井 充実させてもらっています。他にも主担当ではないですが、サポーターズクラブやイベントの運営など。試合のある日はチームブースでサポーターズクラブの皆さんのご対応をさせていただいて、コミュニケーションをとったりと、チームと同一化して自分も仕事を楽しむようにしています。

−−今の仕事はいつからされていますか
坪井 2007年に膝の故障で100%のプレーができなくなり、引退しました。その後はチームスタッフになり、5年8ヵ月主務を。2012年11月から広報を担当しています。

−−主務とはどんな仕事でしょうか
坪井 チームマネージャーです。チームからのリクエストを細部までバランス調整して実現させるのが仕事ですね。練習試合のマッチメイクや合宿・遠征時のスケジュール調整、時には外国人選手の相談に乗ったりもします。広報の今もそうですが、選手時代よりもアンテナを張り巡らせていますね。

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プレイヤーとしての実績

−−ラグビーをはじめたのはどんなきっかけでしょうか
坪井 花園ラグビー場が家の近所だったので、子供の頃は父に連れられてよく観戦に来ていました。と言っても当時は食堂のきつねうどん目当てでしたが(笑)。プレーしたのは中学からです。フッカーから始めて、ロック・No.8を経験しフランカーに定着しました。

−−花園の近くには名門中学が多いですね。
坪井 はい。私は東大阪市の英田中学校出身です。花園ラグビー場と本当ご近所さんの位置にあります。中学からはラグビーをすると子供ながら強く心に決めていました。高校は大阪桐蔭に進学し、3年時に大阪桐蔭として花園初出場。大阪の初出場校として注目され、私の実家が花園ラグビー場に近いので「花園に最も近いキャプテン」などとメディアに取り上げてもらいました。

−−その後は大阪体育大学に進学されていますね。
坪井 大学でも4年時にキャプテンを務めさせていただきました。在学中、同志社大学に公式戦で2回出場して勝っているんですよ。大体大にとって、同志社は特別なチームでしたから、思い出しただけでも熱くなります。その後近鉄に入社しました。25歳の時に日本選抜。今思うと最も選手として波に乗っていた頃です。トップリーグの試合も、トップウェストへの降格も経験したあと、2007年引退しました。

−−引退にためらいはありませんでしたか。
坪井 チームはトップウェスト。もう一度トップリーグに上がりたい。このまま引退すれば後悔するとも思ったのですが、膝が限界でした。長年の酷使で膝の軟骨がなくなっていたんです。人事異動もあり、スタッフとして昇格の力になろうと決断しました。

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ラグビーと仕事

−−現役時代はどんなお仕事をされていたんでしょうか。
坪井 新卒で配属されたのは不動産販売のマンション営業です。当時はラグビー選手でも18時まで仕事をして、それから練習。他の社員と同じように仕事をしていました。試合の翌日、顔を腫らしたまま接客をしたことも多々あります。お客様に覚えていただきやすく、良かったです(笑)

−−同じ部署の方が試合に来られたりも?
坪井 うれしかったですね。同じ職場の方に認められたように思えました。若手選手には、職場の方に応援に来ていただけるように、一生懸命仕事をしよう!そして自分が出場している公式戦に来ていただけるよう、ラグビーも一生懸命頑張ろう!と伝えています。

−−ずっと営業畑だったんですか。
坪井 営業の次が総務部。元々人に接するのが苦手ではありませんでしたが、次に事務処理、管理業務などを経験して仕事の幅が広がりました。もちろん今の仕事にもつながっています。

−−ラグビー経験が仕事に役だっていると感じることはありますか。
坪井 ラグビーで培った、何事にも恐れず逃げず立ち向かっていく強い心、痛みを越えて立ち上がる不屈の精神は、今の仕事にも活かせています。特に高校・大学のキャプテン経験は財産です。全体バランスを考えて発言する事、相手の立場になって物事を考える事、失敗が一番の成長に繋がった事など、今この立場でもフル活用しています。

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日本選抜として近鉄メンバーと。斉藤展士:現NTTコム(左)、山崎明俊:現近鉄ライナーズ主務(右) 両選手。

 

ラグビー選手と仕事の共通点

−−現役の選手に「これをやっておいたほうが」と伝えたいことはありますか
坪井 基本的には、ラグビーをできる間は思いっきりやるのがいいと思います。その中で将来のビジョンを描き、しっかり自己啓発に努めてください。社会人の選手ならシーズン中、業務時間が短い分早めに出社するなどして、職場の方に認めてもらうよう工夫・努力する事。ラグビーと同様に常にいいイメージを持って、自分からボールを…仕事をもらいに行く。

−−ラグビーも仕事もビジョンが大切だということですね
坪井 まずビジョン。そしてビジョンを実現するには準備が必要です。今試合に出られなくても、自分の力を発揮できるチャンスは必ず来ます。チャンスが来た時のために「準備」をしておくことが大切。「段取り八分、仕事二分」という言葉があります。それくらい物事は、準備が重要だということだと思います。

−−現役のうちに、ビジョンを作ること準備の大切さを学ぶことが大切だということですね。
一つ一つの仕事に真摯に向き合う坪井さん。ビジョンを描き、ひたむきに働く姿は現役時代さながら、魂のタックラーそのものです。

 

企業情報
会社名:近鉄ライナーズ
ホームページ:http://www.kintetsu.co.jp/rugby/

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