8月26日(金) 第1節 サントリー 14-13 近鉄

ライン際を走るサントリー7・西川ジャパンラグビートップリーグ 第1節 サントリー VS. 近鉄

2016年8月26日(金) 19:30キックオフ グラウンド:ヤンマースタジアム長居
サントリー 近鉄
14 FULL TIME 13
6 前半 3
8 後半 10
 詳細(TL公式)

マッチレポート

昨年のRWC2015の南アフリカ戦に引き続き、男子セブンス日本代表がニュージーランド、フランスを撃破して見事に4位に輝いたリオデジャネイロオリンピックの興奮もつい先日。4000人を超す熱心なラグビーファンをまだまだ残暑の厳しい大阪・ヤンマースタジアム長居に迎え、創設以来14年目のジャパンラグビートップリーグ2016-2017が幕を開けた。
関西地区でのオープニングは、昨シーズン9-16位トーナメントは勝ち抜いたものの最終的に不本意な9位という創設以来最低の順位に終わったサントリーが、LIXIL CUP2016に進出したもののその後、苦戦して7位となった地元・近鉄を迎える一戦。前回この両チームは昨年のリーグ戦グループA第3節で対戦し、堅守で終始リードを守った近鉄が25-19でサントリーを破ってその後の上位進出に勢いをつけた。共に新指揮官を迎えて名門復活を期すチーム同士の一戦は、サントリーSO日本代表小野晃征のキックオフで開始された。

いよいよ始まったトップリーグ。

いよいよ始まったトップリーグ。


先制したのは近鉄。前半7分、攻め込まれて苦し紛れのオーバー・ザ・トップを犯したサントリーから、近鉄のベテランSO重光泰昌が現役最高得点となるPGを着実に決めて0-3と均衡を破った。対するサントリーも徐々にエンジンがかかり、たびたび近鉄陣内に攻め込むが、近鉄の強固なDFや自らのハンドリングエラーなどでなかなかペースが掴めない。ようやく25分に近鉄のラインオフサイドで得たゴール正面10mのPGをSO小野が慎重に決めて3-3の同点。

近鉄・8クックのアタックをディフェンスするサントリー・7西川。

近鉄・8クックのアタックをディフェンスするサントリー・7西川。


さらに直後の27分、HL付近で近鉄CTBアンソニー・ファインガが犯したノット・リリース・ザ・ボールで得たPGをSO小野が決め6-3と逆転して前半を終えた。前半は両チームのDFの粘りが攻撃を上回った結果の僅差ともとれるが、サントリーはハンドリングエラー、近鉄は反則でアタックも決め手を欠いた。

近鉄・15テイラー。今季は開幕からエンジン全開だ。

近鉄・15テイラー。今季は開幕からエンジン全開だ。


後半も先手を取ったのは近鉄。7分にHL付近のサントリーのホールディングの反則からSO重光がPGを決めて6-6とした。さらに直後の9分、近鉄はゴール前10m中央付近のラックからSH金哲元が右に展開し、ボールを受けたSO重光がサントリーDF網をかいくぐり中央にトライ。さらに自らゴールも決め6-13とサントリーを突き放しにかかる。一方のサントリーも24分、近鉄DFの故意のノックオンを誘い、ゴール前20m正面のPGをSO小野が難なく決めて9-13と食い下がる。圧巻は32分。アドバンテージを得たサントリーはゴール前30m左中間ラックからSH日和佐篤が右に展開、さらにSO小野が右にピンポイントのキックパス。右タッチライン際でDFと交錯しながらボールを受けた右FL西川征克がそのまま走り込み右隅に抑えて14-13と再逆転。

ライン際を走るサントリー7・西川

近鉄・8クックのアタックをディフェンスするサントリー・7西川。


そのままサントリーが粘る近鉄を振り切り、苦しみながらも何とか初戦をものにした。
マン・オブ・ザ・マッチは決勝の逆転トライを演出したサントリーSO小野に与えられた。

DSC_17-1447

記者会見ダイジェスト

近鉄ライナーズ
坪井章監督
金曜日のゲームにもかかわらず沢山のファンの方々にご来場いただき感謝する。このような立派なスタジアム、環境でオープニングゲームをさせていただいた協会関係者の皆さんにも感謝する。ごらんのとおりスコアでは負けてしまったが、最後まで豊田キャプテンはじめ選手たちはしっかりと近鉄ライナーズのゲームを示してくれたので誇りに思う。まだ1試合終わっただけでこれからの長丁場に下を向いている暇はないので、しっかりと切り替え、修正して次のコカ・コーラ戦に向けて取り組んでいきたい。

豊田大樹キャプテン
金曜日の夜のゲームで職場の皆さんにも応援に来ていただき、最後の1点差のところでも力になった。この環境でプレイできて嬉しかった。春のシーズンから非常に調子の良いサントリーに対して、アタック・ディフェンス共にきちんと対応できていてとても良かったと思う。ただペナルティ、スクラムの際にレフリーと上手くコミュニケーションがとれていなかったことが、本気で勝ちに行っていただけに非常に悔しい。監督と同様、まだまだこれから長いシーズンなので来週までにしっかり修正して臨みたい。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

―来週の試合までに至急、修正したい点は?
坪井監督
今日のゲームはMoveFirstをスローガンに臨み、リアクションなどはこれまで以上に対応できていたのでこれは持続していく。ただし前半、我々の武器であるスクラムで優位に立てなかった点で、レフリーとのコミュニケーション、マネジメント面では修正して行きたい。
豊田キャプテン
どこが悪かったというよりも全て良かったのだが、サントリーのようなチームに勝つためにはすべての面でもう少しレベルアップしなければならないと感じている。

―若い力とベテランの経験の融合を図る中、重光選手の今日の活躍をどう評価するか?
坪井監督
チームの特徴として若手、中堅そしてベテランの全ての力を融合するところが近鉄ライナーズなので、その中で重光選手は普段の練習から引っ張ってくれたり、様々な数値面でも良い位置にいてくれたりと非常に評価している。特に今日は大切なゲームということを本人が認識して、背中で引っ張ってくれていた。TLの中でも高いレベルで活躍できる選手だと思う。
―昨年のサントリーと比較して監督、メンバーが大きく変わっているが、実際に対戦してみた印象は?
豊田キャプテン
サントリーは去年までは近場を攻めることが多かったが、今年はバランスよく攻めてくるという印象があり、試合前からしっかりとそこに対応するつもりだった。その点にはきちんと対応できたと思う。

―スクラムでレフリーときっちり意思の疎通が図れなかったということだが、技術的にどのような部分で合わなかったのか?
豊田キャプテン
近鉄とサントリーとはスクラムを押すアングルが異なっている。サントリーのアングルはペナルティだと認識して練習しているが今回は認められていた。

サントリーサンゴリアス
沢木敬介監督
今日は近鉄のプレッシャーに強みを封じ込まれ、100点満点中15点くらいの評価である。近鉄の気迫に今一度大切な部分を思い起こされた。このような試合はシーズン通して必ず何度かは来ると思うが、それを今日のように1点差でも勝ちとるというすごく勉強になったゲームである。
流大キャプテン
開幕戦ということでこのような接戦となることも予想はしていたが、やはりTLで勝つことの難しさを思い知らされたゲームだった。良かった点は勝てたこととこのような苦しい試合を経験できたこと、次につなげるための良いゲームだったと思う。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

―サントリーの前評判が高かった中で接戦だったのは、シーズン初戦で試合への入り方が難しかったのか、それ以上に近鉄の力が上回っていたのか?
流キャプテン
前評判が高かったのかどうかはわからないが(笑)、昨年度9位のチームだっただけにチャレンジャーとして開幕を迎えた。その中で気合が入っていなかったわけではないが、気持ちの入り方は立ち上がり近鉄が上回っていて受けに回ってしまった。

―2年目でキャプテンということで昨年とは全く違ったシーズンになっていると思うが、役割が違う中で今日の1試合を終えたところの感想は?
流キャプテン
自分としてはパフォーマンス優先でしっかりとチームを前に出すことを心掛けて臨んだが、自分のパフォーマンスとしては全く良くなかった。そこでチームを勢いづけることができなかったことは反省点である。上手くいかないときもしっかり声をかけることと他のリーダに任せてまとめてもらうこと、それらの点はうまくバランスはとれていた。ただしゲームを通して、自分が出場していた時の自分のプレイとチームを上手くまとめきれなかった点が反省点である。

―前半を終えてどういった点を修正しようと思ったのか、ハーフタイムでの指示は?
沢木監督
自分たちの小さなミスで歯車がかみ合わないまま試合が終わってしまった。近鉄に上手くプレッシャーをかけられていたが、今日のゲームではもっとバック・スペースを見る必要があった。ラグビーは必ず後ろか前にスペースがあるのに、今日は近鉄の早いプレッシャーに負けて、スペースを生み出したりそこを突くアタックが上手くできていなかったりしていた。

―後半は後ろのスペースにキック、チェイスをかけるといったプレイが非常に効果的だったが?
沢木監督
ハーフタイムに行なった指示に基づくものだが、あのキックの使い方も自分たちのイメージの30%程度なのでまだまだである。

―この一週間で詰めていきたいことは?
沢木監督
もう一度、今年目指しているサントリーのラグビーをするためには何が必要かを確認する。今日はたまたま歯車が少しかみ合わなかっただけで、選手たちは今年の手ごたえを感じている。サントリーがゲームを支配すれば自分たちのテンポになると理解しており、ここ一週間で大きく変えるのではなく、自分たちの目指しているラグビーをもう一度突き詰めることになる。

―今年目指しているラグビーで一番こだわりたい点は?
沢木監督
簡単な言い方で言うと、しっかりとスペースを見つけてそのスペースにアタックする。そのためのアタックのオプションを何種類も持ち、相手のDFに対してしっかり対応しながらスペースを攻めるというラグビーの原則の戦い方を目指している。

(記事:石川悟、丸井康充)

フォトギャラリー

2016年8月26日(金) サントリー対近鉄 撮影:山口勝一

2016年8月26日(金) サントリー対近鉄 撮影:古田浩